銀世界
昨日僕はようやく恋が実った。文化祭、体育祭、チャンスになかなか飛び込めなかった僕が悪いのだが。世界で1番幸せだ。思っていたより少し寒いけど気にならないぐらいには興奮している。楽しみにしてた映画を彼女と見る。本当、昨日の自分を褒めちぎりたい。
それから僕らはコートを買い、カフェで少しゆっくりしてから映画を観て、1500円ぐらいでランチを食べた。渋谷はあまり来たことが無かったからすごく不安だったけど、なんとかなっている。
カラオケに行こうという事で移動をしていた時、急に背後から嫌な気配がした。振り向いて見るとスクランブル交差点の真ん中で白いボロボロの服を着た男が立っていた。直感でまずいと感じた僕は真白さんの手をすごい勢いで引っ張った。
「逃げなきゃ!!」
「どうしたの!?潤君!」
その男から逃げていると、急に周りの人も逃げ出した。後ろを振り返って驚いた。その男を中心にスクランブル交差点が徐々に凍っていき、雪が降り積もっている人は逃げ惑う姿のまま白く凍っていた。電車しか無いと思った僕は彼女を背負って駅へと向かった。渋谷駅はとても混んでいて、皆が止まっている電車に乗ろう乗ろうとしていた。電車に彼女を押し込んだ。その瞬間僕は悟った。僕が乗っている暇は無い。その時間で皆が凍る。
「またね、真白」
「潤!」
ドアが閉まった。何か言っているように見えたが、ドアが閉まって聞こえなくなった。ホームにいる人達はパニックになっていたり、泣きながらスマホを連打したりしていた。最後なメッセージを送っているのだろう。通信障害でスマホが役に立たなかったからボイスメッセージをスマホに残した。
「真白、今日はありがとう。やばいな、言葉が思いつかない。でも、これだけ。幸せに生きて」
もうホームの階段の所まで凍っていた。そして僕は無色の像となった。
「……潤…潤っ!」
真白の声が聞こえた。目を覚ますと真白が僕を覗き込んでいた。でも真白っぽく無くて、眼帯をしていたりなんかちょっと大きくなってたり。
「君無しで幸せには生きれなかったよ」
窓の外はしんしんと雪が降り積もる銀世界だった。
恋はしんしんと のりぬるのれん @norito0202
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