人見知りの少女は迷宮で探索してます
シイ
プロローグ
子供の頃、災害現場で救助活動している人たちの特集の番組を見た。自らの命よりも人の救助を優先するとする人たちの行動や思いは幼少期の私の心に深く刻まれた。
『わたしもこの人たちみたいに人を助けられるようになりたい!!』
子供の頃に抱いた憧れは成長が進むにつれて、私の夢へと変わっていった。
☆ ☆ ☆
夜の闇が晴れるように朝日が昇り始め、セットしているスマホのアラームは鳴りはじめる。
「……んー……」
(よく寝れた)
スマホを机に置いてから、締め切っているカーテンを開くと温もりを感じる太陽の光を体に浴びる。
(今日は迷宮に行くから早めに支度しよ)
洗面所で顔を洗ってから、肩まで伸ばしている茶髪を櫛で整え、パジャマから洋服に着替える。
普段の朝食はエネルギーが食で済ませるんだけど、今日は体を多く動かすので冷蔵庫から食材を取り出して朝食を作る。
(探索者として活動し始めてから3年目。少しずつ自信がついてきた)
全国の各地に存在する迷宮、未知の場所を攻略人物のことを探索者と呼び、政府は探索者を職業として認定し、若い年代の多くは探索者の職を目指している。
(知名度としては低いけど、人気が欲しいわけでもないしね)
トースト、野菜サラダ、リンゴとミカンのヨーグルトを用意しながら、テレビをつけると朝の情報番組で迷宮内で活動している探索者の特集が流れる。
(利益優先の人が大半だけど、私の場合は人を助けることもしたい)
迷宮内での活動は自己責任。魔物が存在していることから、判断の遅れやミスによって命を失う探索者も多く存在している。
(他の職業でも出来ることかもしれないけど、与えられた力にはきっと意味があると思うから)
救助活動なら他の職業でもできるといわれるかもしれないけど、自分が手に入れた力を幼少期に憧れた人たちのように使ってみたい。
(治癒が可能な白魔法の資格も取れた)
本来の氷属性と治癒が可能な白魔法。両者の相性としては悪くないと聞いているし、簡単な応急処置程度だけど、ソロで活動している身分で取得したほうがいいと思った。
(私の担当者、まだいないんだよね。前に協会から人はつけるって聞いたんだけど……)
探索者には活動をサポートする担当者が教会からつけられる。私の場合は人見知りで人と上手く話せない所と、同乗者を救助している所から、担当者の人材に頭を悩ませているのかもしれない。
(自分で探すっていうのも考えたけど……協会で話せる人は少ないし……)
いないのなら自分で探すことも考えたのだが、知らない人と話すのが無理だった。
☆ ☆ ☆
朝食を取ってから、台所で食器を片付けてから、装備一式を確認する。
(メモリは持った。回復用のポーションもある。刀はこの前、鍛冶屋さんで調整してもらった)
私の魔法の行使の際に必要となる氷属性が付与されているメモリ。白魔法のメモリ。薬品特有の苦さはあるけど、即効性のあるポーション。青色の鞘には相棒の刀が収められている。
「行ってきます」
出発の支度が整うと、私は外に置いてあるマウンテンバイクに乗り、探索者の協会に向かった。
次の更新予定
2024年12月25日 07:00
人見知りの少女は迷宮で探索してます シイ @siili
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