コンビニエンスストアで面接した時のエアコンの温度

とるーまんND

第1話 愛する者は苦しむ者

『はじめて』

色んなときに『はじめて』というのはやってくる。

だからいちいち『はじめて』におびえていたら生きていけない。

『はじめて』を怖がる事は『恥』だ。


なんて、絶対に無理。

『はじめて』の事におびえるのは当たり前。『はじめて』の事におびえるのが普通。

『はじめて』を怖がる事は恥だ、なんて言ってる事こそ恥だ。

『はじめて』を怖がる事は当たり前。








あと一回、自分にチャンスがあったらどれだけの偉業を成し遂げられたか。もしかしたら、歴史に名を残せたかもしれない。全人類から崇められ祀られ、信じられていたかもしれない。

そう語るのは、正方商事3代目会長である田松重弘。

彼の息子は正方商事4代目会長になるはずだったが、プレッシャーやストレスに耐え切れず、自殺した。

彼の息子は性格が良くて優しい子だった。求められるものは何でも届けた。困っている人がいれば手を差し伸べ、救った。

しかし、彼の息子は苦しんだ。彼の息子は3代目会長である父を愛していた。父も息子を愛していた。父に愛され、父を愛した。

彼の息子は父に愛されるのと同時に、父に苦しんでいた。

彼の息子は遺書を書いていた。遺書はたったの2行だった。


お母さんとお父さんへ。

今までありがとうございました。さようなら。

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