大学入試センター試験

マッシー

第1話 センター試験出題委員

 大学入学共通テストは、その昔、大学入試センター試験と呼ばれていました。


 私が大学入試センター試験の出題委員を引き受けたのは、今から35年前でした。私は、その時に経験した不思議な出来事を記録として残しておくことにしました。


 今の「大学入学共通テスト」もそうですが、昔の「大学入試センター試験」は駒場にある出題センターで作られています。

 出題委員は、3親等以内に受験生がいない大学の先生たちで構成され、科目ごとに分かれて、ひと月に一度、おおむね連続して3~4日間出題センターに詰めて、2年かけて試験問題を作ります。

 また、出題委員の先生方は、その期間を含めて前後2年間(合計6年間)、「自分は出題委員だった」と口にすることはできません。

 それを破ると、公務員の守秘義務違反となり、大学を首になります。


 センターのコンピュータはすべて、ネットとは切り離されていて、出題センター内のコンピュータでさえ、回線を通してデータをやり取りすることはできません。

 3~4日検討して内容に改定を加えられた試験問題は、紙と当時はフロッピーディスクに入れた形で、入試センターの職員に引き渡されます。

 その紙やフロッピーディスクの管理は厳重極まりないもので、紙が一枚でも行方不明になったら、その問題は作り直さなければならなくなります。


 出題委員は担当科目の内の一問を作ればいいのですが、試験問題を記録した電子媒体(フロッピーディスクやUSBメモリー)を外部に持ち出すことはできません。

 すなわち、入試問題の作成は、すべて出題センターの中だけで完結しなければならないのです。

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