ROSE

「やぁっと見つけた」


 彼女はビルの間でタバコを吸っていた。多分ポイ捨てする気満々だっただろう。でも、そんなこと今はどうでもいいや。それどころの話じゃないからね。

 自分はこの女性に用がある。男好きな服装を好んでしているわけではない、彼女に。


「何? ナンパ?」

「そんな場合じゃないんだよ、シスター・ローズ」


 彼女はタバコを落とす。自分がシスターだと言うことを何故知っているんだという表情だ。


「修道院から逃げ出したって聞いた」

「だから?」

「でも人心掌握術はすごいと聞いている」

「……本来の祈りはそんなもんじゃないけどな?」


 ニヤリと笑うその表情は、挑戦的だ。


「祈ってほしいんだけど」

「何のために? ちなみにあたしは金では動かないかんね?」

「地球のためだって言ったら?」


 Rabbitのその言葉に、ローズは笑った。


「何? 地球やべぇの?」

「やばいから来てるんだよ、こんな場所まではるばると」

「ざまぁねぇな! 人間が悪の道に進んだからそーなるのは当然だっつーの」

「そこをなんとか。とりあえず地球のために『祈りの力』とか『人をまとめる力』が必要になるんだよ」

「人をまとめるのはともかく、祈りの力ねぇ……それって科学的に証明されてんの?」

「シスターが信じてないの?」

「だからこんなところでタバコ吸ってたんだよ」


 不良シスターは持っていた小さいアルコールの蓋を取り、口に含む。確かに祭事に酒は必要だ。そこは大目に見よう。


「こんなシスターに祭事を頼むのもまさに世紀末だね」

「あぁ? んなこと言うならやらねぇぞ?」

「うそうそ! 頼んだよ」


 それだけ頼むとRabbitは立ち去る。

 シスター・ローズ。彼女の祈りの力……霊力とでも言うのだろうか。それはお墨付きらしい。そんな噂を聞きつけて、非科学的な力でも宇宙軍が依頼するなんておかしな話だ。

 だけど今の地球は非常事態。頼れるものはなんだって頼る。できる限りの最善を尽くす。

 これがRabbitの方針だった。

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