霊媒師イタ子は知りすぎた
キャプテン・ふっくん
第1話 イタ子、依頼を受ける
イスルギ・イタ子は
彼女はこれまでに様々な故人の魂を降ろしてきた。歴史の生き証人の魂を降ろして、歴史書の矛盾を正しく直した事でその名が世界に知れ渡った。他にも、故人が隠していた大変
そして、世の中には故人ともう一度話したいと願うものや、故人の墓暴きをしたがる者たちが多く存在する。必然的にイタ子の元にはさまざまな依頼が引っ切り無しに来るようになった。売れっ子霊媒師なのである。
今回もイタ子の元に依頼が届く。イタ子が売れっ子になり始めた頃から雇った従者が一通の手紙を持って、イタ子の家のドアを叩いた。髪色も肌の色も色素の薄いその少女従者は、気の抜けた声でイタ子を呼んだ。
「イタ子様ぁ~依頼っすよ~」
「またなの、マシロ……私、休みが欲しいんだけど」
「これでも、あーしが独断と偏見でかなり絞ってるんすよ~。読まずに食べたのもいっぱいあるっすけど」
「おなかを壊すからやめなさい……は、あなたには無用の心配ね」
マシロは冗談ではなく本当に手紙を食べている。イタ子に霊媒能力があるように、マシロには「食べた物は何でも消化できる」能力が備わっているのだ。毒すらも消化してしまうので、イタ子はマシロに毒味をさせたりしている。様々な秘密を握るイタ子は、偶にではあるが命を狙われる事があるのだ。
「でもでも、今回の依頼は破格っすよ。一回の依頼でなんと報酬金貨百枚!」
「!!」
ピクピクっとイタ子の耳や眉が跳ねるのをマシロは見逃さなかった。イタ子は金遣いが非常に荒い。多額な報酬を手に入れては変な壺や水晶を買ったり、
「オホン……それで、どんな依頼なの?」
「イタ子様、マジで分かりやすいっすね~。カワイくて良いと思うっすけど」
「何か言った?」
「いえいえ~。んで、内容についてっすけど……相続問題に悩んだ貴族の領主の降霊を頼みたいって奴です。よくあるパティーンっすね~」
「相続問題かぁ……往々にして
「金貨百枚(ボソッ)」
「早く準備なさい」
「ういっす」
売れっ子になってからというもの、イタ子は増長して仕事に文句をつけるようになった。しかしマシロはそんなイタ子に付き従って3年になる。扱いには慣れたものだ。マシロは言われるまでもなく自分の準備は済ませていたので、イタ子の準備に取り掛かった。
「げぇ~。また無駄遣いしたんすか……何すかこの怪しい木製人形」
「それね、旅の商人が強く勧めてきたのよ。御利益あるって」
「霊媒師がそんなん信じちゃダメっすよ~」
「それ、今回持っていくわよ。私の荷物に入れといて」
「商人だけじゃなくって、あーしの話も聞いてほしいんすけどね……」
とは言いつつ、マシロはイタ子の言いつけは大体守る。何かあってもイタ子のせいにすればいいと思っているからである。どうせ荷物はイタ子が持つ。出来上がったのは、踏切で待ち合わせでもしてるのかと思うほどの大袈裟な荷物。イタ子は無駄な荷物をいっぱい持っていくのだ。
「ふぃ~。イタ子様、出来たっすよ」
「それじゃあ行きましょうか」
「はいはい~」
「というか、行先はどこなの?」
「それ、普通もっと早く聞くと思うっすよ。ヤンゴトナキ帝国っす」
「じゃあ、あっちの魔法陣ね」
「っすね~」
目的地のヤンゴトナキ帝国までは、瞬間移動ができる魔法陣で行く。といっても国防の観点から、国の要所から要所まで直接は行けない。侵略戦争、スパイ活動などが容易になってしまうからである。魔法陣が設置されているのは街の外の開けた場所。二人はそこまで歩きで向かう。
「着いたわね」
「それじゃあ、あーしは移動の手続きに行ってくるんで、荷物見といて欲しいっす」
「ええ。行ってきなさい」
面倒な手続きは基本マシロの役目である。それ以外にも基本的な家事やモンスターをハントするゲームで尻尾を切るのもマシロの役目である。イタ子は仕事以外何もしないし、何もしない方がマシロにとってありがたいのであった。
「行先は?」
「ヤンゴトナキ帝国のミカジメ領まで、大人二人っす」
「スッタモンダ王国からヤンゴトナキ帝国ミカジメ領までだと、大人二人で銀貨10枚だ」
「はいっす」
「確かに。これが通行証だ。無くすなよ」
「どもっす」
手続きを終え、魔法陣に乗って移動する。青白くまばゆい光に包まれたら、スッタモンダ王国とは異なる植生の景色が目に入る。移動が正常に完了した。
「目的地の街は……あっちの方ね」
「はいっす。また歩きっすけど、文句言っちゃダメっすよ~」
「子供扱いしないで。あなたよりもお姉さんなんだから」
「あんま説得力ないっすよ、それ」
数分後に結局文句を垂れ始めるイタ子をマシロは適当に
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