第6話不安感と色気の気配
子供の頃自分はこの世界の中心の主人公だと思っていた。高い山のテッペンにいるもんだと思ってた。
でも、大人になって気づいたあの時は周りの大人達が持ち上げていてくれてたんだなって。
大人になった今の方が子供の頃より低くて冷たいところにいる。
皆普通の顔して歩いてる、俺は必死に藻掻いてるのに。
今じゃテッペンどころか地べたを這いつくばってる・・・
―――――
「っは?!今何時だ、3時か・・・あ”ぁ”」
手を伸ばすと寝る前に摂取していたもやしカップラーメンとレモンサワーの缶ゴミに手が当たった。
あの子、ミコナタに初めての料理を振る舞ってから一週間が経った。
あの日以降も面倒が見れるときは古本屋から病院まで行き来をして彼女のために食事を作り。
その後、本屋に戻り軽いバイトをし余った時間は店主のご厚意で借りているこの一室で
食事について学んでいた。
「昨日・・・何覚えったけ?
酒飲んで飯食って寝落ちしてたら酒と一緒に知識も抜けちまった、シャワーでも浴びるか。」
「・・・」
ここ数年シャワーを浴びていたりレジの店員として勤めてる際に、
ふとした場面で心と身体が分かれてるような、自分のことが全く分からなくなってしまう事ばかりだ。
菓子パンを食事を摂るため仕方がなく貪る。嫌いでもなく好きでもないがお金がかからないからだ。
最近自分にお金をかけることが馬鹿らしくなってきた。
お金をかけているものを強いて上げるとしたら・・・
彼女だ。
―――
――
―
「あ、ユウ様おはようございます。」
「あぁ、おはようございます。」
朝の憂鬱な気持ちがミコナタの挨拶(笑顔付き)のおかげで少しだけ和らいだ気がする。
「・・・」
「・・・。顔に何か付いてますか?」
先ほどの笑顔から一変し不思議なものを見るような目でこちらを見つめてきたな・・・
「へ?あっ、あ!いえいえ!そういう理由ワケでは・・・」
「なら別にいいんですが」
「あ。もし言っても怒らない・・・ですか?」
「もちろんですよ。むしろ何か変だと思ったらドンドン仰ってもらって構わないです。それすなわち、こちらのことを普段から気にかけてくださってるともとれますから。ミコナタさんに少しでも気にかけてもらってこちらとしても嬉しいです。」
「なるほど。ではお聞きするんですが・・・」
「オハヨー!!!2人とも!!!今日も1日良い日にしようぜぇ!!!」
ミコナタが口を開き何かを伝えようとした瞬間に小学生のような元気な挨拶でロリが入室してきた
「うわぁっ?!びっくしたぁ・・・ガキは朝から元気だな」
「あ、誰がガキだ。お前は元気じゃねぇってのか?」
「元気じゃなかったら仕事だとは言えこんな朝早くにここに来てないよ」
「ま、それもそうか!」
「ホントに・・・よし、それじゃあ。
ミコナタさんの会話相手はロリの引き継いでそろそろ朝飯でも作りにいきますかと。」
「あっ・・・」
「ごめんねミコナタさんまた後でさっきの続き聞かせて。」
俺は彼女の目から逃げるように部屋を去った
―――――
『あっ、それと今日の午後2人ともカウンセリングのために精神科に移動な
15:30から予定してるから2人揃ってそれまでには移動済ましとけよ。』
古本屋にて現在時刻14:30気づけばもうそんな時間にもなっていた
彼女の付き添いをしなければいけない時間まで残り一時間に迫っていた
「あら、もうこんな時間なのね。今日はもうお仕事の手止めて病院に向かった方が良いわね。」
「すいません、急に無理言っちゃて。」
「大丈夫よ。私にはミコナタちゃんの様態はよく分からないけど、
付き添いを任されたってことは。
きっと御伽君の力があの子にとって必要ってことだから気にしないで行ってらっしゃい。」
「っすね・・・行ってきます!」
俺が、俺なんかが彼女を支えられるなら力になれるなら・・・
―――――
「ここが診断室か、にしてもこの病院ホント広いな精神科まで併設されているのか。」
「すごいですね・・・私が元々住んでた地域にはこんな広い建物1つしかありませんでした」
「へぇ。そういえば、ミコナタさんが元々住んでた地域はどんなところなんだ。
大きい建物が1つしかしかないとするとのどかな田舎とか?」
「そうですね。こちらに来てから、テレビでこの世界の田舎の原風景というものを拝見しましたが森の中ですのでそれよりも自然が多いですね。目立つものがあるとしたら先ほど言った大きな建物の大図書館ぐらいですね」
「そっちにも大きな図書館あるんだ」
「はい。そっちにも?」
「うん。実はこの病院から少し歩いたところにも緑に囲まれた大きな図書館があるんだ。
まぁ、今は結構廃れてるけどね。」
「いいですね・・・一度行ってみたいです。」
「それじゃあ、今度さ。ミコナタさんの症状が落ち着いて病院から出てもいいって言われたら
外出許可貰って2人で行きませんか。あっ。も、もちろん無理にとは決して言いませんけど・・・」
「いいんですか!!!」
つい外出に誘ってしまい、
でしゃばったかと思っていたらビックリするぐらいの大きな声で反応が返ってきた。
「もちろん!それじゃあ今度の・・・」
「なに話してるの、もしかしてデートの話?いや~ん、可愛い~。お姉さんも混ぜて混ぜて♡」
「うわあ、え!誰?!」
「誰って酷いわね、2人して約束の時間になっても部屋に入ってこないから心配してたのに。も~ぅ♡」
「約束・・・っ、てもしかして貴方様が」
「そう今日”2人”のカウンセリングを担当する愛峰妖子アイミネヨウコでーす♡」
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