病院療養エルフ~長命種エルフなのに病弱系ヒロインと精神不安定男~
アックス斧御
第1話オープニング
「やっぱりここに居たんだ!ミコナタ」
「あれ…ラギカガ何か御用だった?」
生まれてから3500年経ち埃りまみれの大図書館
その大図書館の日が差すいつもの小窓際で知りたがりな彼女は自身以外
他に誰もタイトルを覚えていないような本を熱心に読んでいた
彼女は親友の声掛けに本をめくる手を止めた
「ええ、あなたのお母さんがもう何日も会話を交わすどころか
ご飯を食べにすら家に帰らないことに顔を真っ赤にしていたわよ」
呆れた…と思いつつ自身の探求心に対してそこまでも熱心になれることに
尊敬を込めながら彼女の親友ラギカガは彼女の目の前で堂々とため息をついた
「つい何日も大図書館に籠ってしまった…お母さんに叱られてしまう」
「叱られてとぉっーぜんよ!あなたはエルフ族でありながらその身体は人間よりも貧弱なんだからぁ!」
「ご、ごめん」
「はぁ…謝るならあなたのお母さんを前にして謝りなさいよね。謝る相手は私じゃないでしょ」
「うん、もちろんお母さんに心配をかけたことを謝るよでも…」
「今さっき私を見つけた時のラギカガの顔に安堵の色が視えたから。
だからラギカガ心配かけてごめんね」
「っ、分かれば…いいのよ」
「えぇ、ラギカガが私のこと大事にしてくれてるがとっても分かったよ」
「っっっ!はぁ…あなたはホント…身体も弱ってることでしょうから、
今日の夕ご飯にはちゃんとお家に帰ってあげるのよ!私とおんなじくらいお母さん心配してたわよ」
「うん、わざわざ足を運んでくれてありがとう」
「親友なんですからこれくらいおまかせよ!」
_____
ぱたん
「ふぅ~面白かった、
外がもうこんなに…二人が心配してるよね…でも後、一冊なら」
「んんんー…この本にしようかな…って!きゃっ」
ミコナタが手を伸ばした瞬間、突如として本が浮きひとりでに本が捲れだした
「いやっ…眩しっ!」
「だめ…力が入…ら、ない」
…ぽとん
静かな図書館の中には誰も名前を憶えていない
一冊の本だけが残った・・・
_____
「おつかれさまでした」と、
そういつもと変わらない挨拶を手放した後、
エプロンの紐を解き『御伽おとぎ』と書かれたネームプレートを外し
誰も周りに居ないことを”確認はせず”ため息をついた
「これからどうすんだぁ、人生これ?」
22歳にもなり同年代は大学を出て立派な大人として社会に出ていくという中
夢を持たず高校を卒業しアルバイトすら長続きせず転々と移り溶かした4年間、
今まで見ないようにしていた現実とそろそろ向き合わないといけないようになってきたが…
たかがアルバイトをするだけでも精一杯のため今後の計画や就活の準備、下調べすらできていない。
かと言って、もうこれ以上薄っすらと嫌われている職場で見栄を張り元気な挨拶を職場の人間に
向ける気すらも、沸かなくなってきている。
(今回こそは一年は続けるつもりで応募したけど・・・
まぁ半年は、よくやった方か。
あぁ。これからどうしようかな、webライターなんてどうだろうか
最初こそ収入自体が無かったり、学生バイトの小遣い稼ぎ程度の収入かもしれないが。
始めるに至って特別な技術も必要なく、なおかつ一人で黙々と作業ができ、
一々他人との付き合いが原因のストレスに悩まされないし。
でも、一人暮らしにとって収入0の月が出てくるのはあまりにも痛すぎる貯金もギリ2桁程度・・・
それとも今のバイト辞めた後に別のバイト先で働きながら勉強でもして大学に入って勉強しなおすか。勉強、勉強ねぇ・・・受験勉強したくねぇなぁ。
いや、それとも・・・)
あぁ、最近はいつもこれだ。すぐに不安要素で頭がいっぱいになる。忘れたい。
そういつもの帰路についていた時、とある古本屋が目に入った。
そう、ふと。本が、読みたい。
普段から少し気になっていた古本屋へと、つまを向けてみることにした。
_____
店内を少し見回すも人がいる気配は感じられない・・・まぁ盗みを働くつもりもないので、
特にこれ以上は”本当”に何も考えずにしばらくし本を物色し始めた。
「色んな本がある」
阿保みたいな感想になってしまったがまさにそんな感じだった。
有名な著書の古本から、興味がそそられる全く素性の分からない作品から、
全くもって興味が沸かないよく分からない本まで様々な本たちががそこには鎮座していた。
「あぁ、ごめんね」
お店の奥からあまり健康的には見えないお婆さんが申し訳なさそうな顔をし、そう言葉を掛けてきた。
おそらくこのお店の店主らしき人だろう。
「いえ、まだ本を物色していただけですから」
「ごめんねぇ、普段からあまりお客さんとして人が来ることが少ないから普段は上の自室にいるのよ。
だから気付かなっかたの・・・ごめんなさいねぇ。」
そう言いながらそのお婆ちゃんは自分が下ってきた老体とは相性が悪そうな階段に目を向け
改めてこちらに申し訳なさそうにはにかんだ。
「あ、いえいえ本当に気にしていないので大丈夫ですよ。気にしないでください。」
こういったやり取りは嫌いだ。
その後は、先ほどからの本の物色に店主であろうお婆ちゃんが加わり静かな時間が流れた。
だが、なぜだろう。
あまり深く知らない人間が同じ空間に居るのに普段とは違い、あまり不安感が無い。
と、少し気になる本が目に入ったどうやら数年前に何かしらの賞を取った作品のようだ。
表紙のデザインや中古であることから購入をすぐに決意。
まぁ、そう高い買い物でもないし、むしろ安い。それに中身が期待どおりではなくても積んだり、
最悪処分してしまえばいいのだから。
実際、よく本を読んでいた学生時代と違い非正規雇用として働き始めた最近は忙しさや業務、
人間関係等々の疲れ、将来の不安からくる圧迫感からか、そうして積んだり処分してしまうことばかりだった。
これも良さそうだ、内容は良く分からないが表紙に
可愛らし羊とサルのイラストが描かれている・・・買うか。
「いい本には出合えたかしら」
何度か気になった本に目を向けているとお婆ちゃんが重そうな腰を上げ一瞬、辛そうな顔をしたが
すぐに優しく微笑みながらこちらに駆け寄ってきた。
「あ、えぇ。と言っても、これだけの数があるとまだまだいい巡り逢いがありそうで探しがいがありそうですね」
「そうねぇ・・・お恥ずかしい話なんだけどこんなに沢山あると歳も相まってか、どこにどんな作品があったかも忘れてしまったのよね」
実際、何十冊も本が重なりお互いとお互いを支えあって運動会の組体操の如く連なっているため。
一番下の本や、奥のほうにある本の中身どころか表紙の確認すら難しい。と、そんな本達に目を向けているとほこりを被った一枚の色褪せた紙が目に入った。
「これは・・・求人募集」
「あぁ、その募集用紙ね・・・懐かしいわね。でも、もう今は張り出してないけど」
「募集やめてしまったんですか?」
「えぇ、せっかく採用してあげても今の最低賃金を人件費として捻出するのは難しいし。
もうこのお店も私自身の歳もそろそろ限界だからねぇ・・・」
チラシの色あせから何となく時間の経過を感じる、確かに店主本人が把握しきれてないのも納得した。
「しかし、このチラシまだあったなんて・・・。
そっちの奥のほうにもしかしたら全然記憶から忘れてしまった本が、あるかもしれないわね。
お兄さん一つお願いしてもいいかしら」
「お願い?」
「えぇ。普段私一人だと本の運搬は当たり前に整理整頓なんてできないから、
お兄さんにこの辺りの本の整理をお願いしてもいいかしら。全部は無理かもしれないけど、
気に入った本があったら譲ってあげるから。お客さんももうあまり来ないし・・・厳しいかしら?」
「是非!・・・あ。」
これは起点なのかもしれない、そう思った時には考えをまとめるよりも言葉が出ていた
普段の会話では相手がどういった返事を期待しているか窺ってからからレスポンスを返すため
変な間が開いてしまうのだが。そんな自分が”久しぶりに”ノータイムで自分を出した
結果としては良かった、店主の柔らかかった顔がさらに柔らかくなり簡単に喜んでくれているのが分かった
「ホントかい?!嬉しいよ。どうするかいもう今日は夕暮れだからお店を閉めちゃって
今から取り掛かるでもいいし、都合が悪いようなら別日でも大丈夫よ。そこはお兄さんに任せるわ」
「そうですね・・・思い立ったが吉日と言いますし今から取り掛かっちゃいましょうか」
「あら、ホント。ありがたいわ、ふふふ。それにしてもお兄さん若いのにことわざなんて知ってて
物知りなのね。」
_____
「悪いね、お店の締めまでやってもらっちゃって」
「いえいえ、このくらいヘッチャラですから。
ちなみに作業の範囲はどのくらいになりますかね、触っちゃいけないスペースとかはありますか?」
「いいえ、とくには無いから体が無理しない程度に好きに作業してくれて大丈夫よ」
「了解です・・・、それじゃあ。まだ夕暮れ時のうちに始めちゃいましょうか」
_____
「よいsy、うっ・・・当たり前だけど本って、何冊も積み重なってるとかなりの重さになるな・・・」
「そうねぇ、ふふふ。重いものを持つとき若いとは言っても、腰には気を付けてね」
「よいしょっ、と。確かに、これは腰にキますね。
それにかなりの歳月のせいか埃がかなり、ゴホッゴホッ」
「ごめんなさいね、建物が古いから暑かったり埃がすごいわよね。
あっ、ちょっと待っててね今飲み物と体を冷やす氷を持ってくるわ」
「ありがとうございます」
_____
「へぇ、娘さんは現在そんな離れたところにお住まいなんですね」
「そうなのよ最近は忙しいせいか、しばらく顔も合わせてないからもーう余計に心配で心配で」
作業開始から小一時間ほど経ち現在は休憩という形をとっている
休憩のお供は店主さんから頂いた夏にぴったりな麦茶と、子供のころによく親が買ってきてくれた
二つに折れる透明な筒状にはいったカラフルな、あのアイスを店主さんと二人で分け合っている。
「あぁ、そうなんですね。それにしても、こうしてお話を聞いていると娘さんのことを余程溺愛されているんですね。」
「そうねぇ、娘を生んだ時私はもういい年で主人も居なかったから周りとのギャップで少し苦労をかけさせてしまって。今、元気にすくすくやっていってる話を聞くと嬉しくなっちゃうの、ついね。
まぁ、思春期の頃はほんっとに大変だったんだけどね。でも、そういうとこも余計に、ねぇ。」
「そうだったんですね。そういえば、娘さんは現在おいくつなんですか」
「今年でたしか29だったはずよ。あの子いい年して恋人の一人も連れてこないから、
それもあってか余計心配で。そうだ、よかったら御伽君うちの子どうかしら。
母親が言うのもあれだけどとってもいい子なのよ」
そういい、店主さんが差し出したガラケーには
黒板を背に学生たちと仲むつかしく笑顔で写真に写っている教師であろう女性の写真が表示されていた。
たしかに・・・美人だ、が。この流れの後でおそらく来るであろう
鉄板の娘さんとのお食事やらなんやらの話を振られた際に
断るのはかなり失礼になってしまうので、店主さんとの雑談終わってしまうのは名残惜しいが
ここで作業に戻ることにしよう
「っと、店主さんもう休憩を始めてからいい時間ですしそろそろ作業に戻りましょうか」
そういうと店主さんのガラケーに表示されている現在時刻18:49を指さした
「あら。もうこんなに経ってたのね、しっかり体は休めたかしら」
「ええ」
「そう、それならよかったわ後半は私も軽作業だけにはなってしまうけど手伝わしてもらうわね」
_____
休憩からも少し経ち店の外は夏とは言えそろそろ暗くなりかかっていたがその分作業もかなり進んでいた
とはいえお客さんが先ほどの状態を知っているのであればおそらく「キレイにはなった」とは言うであろうが。
初めてのお客さんが見たときは口を揃えて「汚い」と言うであろう現状ではまだまだあった
「ありがとう。あれから再開してまたさらにかたずいたのね、ちょっとまってまたタオルと麦茶持ってくるわね。」
そういうと店主は先ほどの様にお店の奥の自宅部分へと足を運んで行った
「ありがとうございますー!」
店の奥へと向かって行った店主さんへ聞こえるようにお礼を言うと思わず疲労からか浅いため息が出た
「ふぅ・・・」
始めた際の動機は何か少しでも人生の起点になるかもとといったふわふわとした理由だったが。
いざ始めて見ると、本を一冊かたずけ埃を払いキレイにするたび店主の顔が優しく笑顔になったり。
特別思い出がある本を手に取った際には、
その本にまつわる小話を語ってくれるため結果この空間の居心地がとても良かった。
「ラスパ・・・頑張るかっ!」
誰も見ていないだろう、気づかないであろう。小さな声でラストスパートのため自らに発破をかけ、
埃のかぶった一冊の本を手に取った、その時。
「眩しっ!」
瞬間本から怪しい光が放たれた、そして。
「う、っうわああ!!えぇ?!」
気づいた時には一人の少女がへたり込んだ自身の膝の上で横たわっていたのだ。
ただ、大の大人の男性がこれほどまでに驚いた声を上げたのには理由があった。
それは突如として現れた少女の様態が見るからにおかしく。
現在進行形で今この瞬間、弱っていってるのだ。
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