月下、終末に魔女との茶会を

@kurokimidori

第0話 月下、孤独の茶会

月明かりに照らされ、怪しげに揺れる草原の中にぽつんと佇む古民家。背の低い草原だけが広がる中で、それはどこか場違いな雰囲気で、無理やりその場に置かれているようだ。


 古民家の中、テーブルには一人の女性が座っている。銀色の髪は月光を受けて微かに揺らぎ、深紺のドレスは自信の真白な肌とは対照的だ。その姿はこの世界のものとは思えないほどに完璧で、浮世離れした存在感を放っていた。彼女は、ティーカップ片手に今日も一人で茶会を開く。窓の外に浮かぶ満月へ視線を向けながら、その表情には何の感情も浮かんでいない。草原も、風も、彼女の周りのすべてが止まっているかのように静まり返っていた。


「今日も世界は変わらない。」


 彼女は静かにため息をつくと、退屈そうにティーカップを置く。カチャリと、カップとソーサーの交わる音だけが空虚にこの部屋に響く。再び満月を見上げる。その瞳は、退屈そのものであるが、どこか何かを待ちわびているようだった。それはこのつまらない日々の変化か、あるいは……。動かぬ月の光が彼女の横顔を今日も静かに照らす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る