第5話 最高金額




 は、

 なん、これ、

 これ、

 これは、あの時、斬り落とされた、暖の、

 奇襲した部下が、持ち去った、はず、

 もしかして。奇襲を命じたのは。親父、か、人魚、か。

 親父か人魚。なら、

 いいや、

 確かに。

 命すら、尊厳すら。面白おかしく弄ぶ為の遊び道具としか思っていない、最低最悪な親父と人魚だが。

 ファミリーには手は出さない。

 情報は、差し出すが、自分たちが計略を立てて、間接的でもファミリーに手を出す事は。しない。

 なら。

 奪い返した。の、か。


『君がだんの右腕を奪い返したがっていたから、私が叶えてあげたよ。ほら。もう離れ離れにならないよう、一緒に出品してあげるよ』


 地震、竜巻、津波が肉体の中で次から次へと湧き起こり、細分化しては、合体しては、暴れ回る中。

 透明度抜群の声音で素敵笑顔の親父の幻聴が克明に突き通って行く。




(くそ親父が、)




「百億トッテ。百億トッテ。現在百億トッテです。律希りつきが、十番目の商品自らが今回のオークション最高金額を打ち出しました。百億トッテ。百億トッテです」


 物好きなのか、親父の指示なのか、律希のファンなのか。

 商品である律希が声を張り上げて金額を言っても、無視をする事もなければ、律希を黙らせる事なく、オークショマニアは律希をオークションの招待客として受け入れたのだ。


(っは。オークショマニアの、親父の、人魚の気紛れだろうが何だろうがどうでもいい。誰が、暖の右腕を、これ以上、俺以外の野郎に手渡すもんかよっ)




 全財産つぎ込んででも、肉体を売っ払ってでも、借金してでも、落札してやる。












(2024.12.28)



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