第3話 親父
(あ~あ。早く助けに来いよ、
豪華絢爛な三基のシャングリラが遥か頭上から、オニキスピンクの大理石の床と壁を壮麗に彩らせる馬蹄形の会場は、二階と三階に設けられているボックス席から、舞台となる一階全体を見下げる。
まるで舞踏会会場のようなここで、闇オークションが行われており、招待客及び従業員同様に仮面を着けたオークション司会進行役、通称オークショニアが、十番目の商品である人魚の接吻を受けて戦闘生物となった
(もう飽きたからオークションに出す事にしたよって。親父め。素敵笑顔で言いやがって。へえへえ。本当に飽きて売り出そうとしてんのか。俺がこのオークションから如何に逃げ出すか高みの見物をしたいのか。もしくは、暖に発破をかけているのか。くそっ。人魚の力を使って身体の自由を奪いやがって)
半年前。
律希が桔梗大太刀を鞘に収めたまま振り回しては襲いかかってくる刺客を床に倒していきながら、暖を連れて無事にオークション会場から脱出して、外で装甲車に乗って控えていた部下と共に、律希が装甲車を走らせては律希の邸へと到着してのち、三か月後。
死ぬ気で鍛え上げては桔梗大太刀の重みに一人で耐え忍ぶ事ができた暖が鞘を引き抜き、律希の命により、桔梗大太刀に封印されていた巨人、悪魔、天使を間を置かずに解放したのだが、解放したからと言ってすぐに、巨人の予知能力、悪魔の気枯能力、天使の治癒能力を授けられたわけではなかった。
解放された巨人、悪魔、天使が桔梗大太刀の中のみならず、現世でもまた三つ巴の闘いを始めたからではなく。
奇妙なほどに従順な巨人、悪魔、天使は声を揃えて言ったのだ。
まだ能力を授けられる段階ではない。
桔梗大太刀の鞘を引き抜いた暖ではなく、律希に能力を授ける事に異論はないらしいのだが、巨人も悪魔も天使も言わば精神体で、桔梗大太刀の鞘を抜いて封印を解いた暖の肉体に下りる事により、授ける事が可能だという事。
しかし、現状の暖の肉体に下りる事はできないという事。
巨人、悪魔、天使に鍛え上げるしかないと言われた暖の地獄の特訓は、さらに加速度を増した、その最中の出来事であった。
初めての事であった。
部下からの奇襲を受けた律希は、共に攻撃を受けた暖を守る事ができず。
暖の身体の一部は欠損してしまったのだ。
(闇の世界からの解放を望んでんだか、望んでねえんだか。はは。探し続けてんだから、ざまあねえなあ)
(2024.12.25)
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