第7話 ろくろ首

「おや、表さん。

こんな所で奇遇だね。」


「助さんじゃないか。

こんな朝早くから精が出るね。」


「いえ最近変な事件が多くてね、お上からの

お達しで朝早くから見回りをする事になってるんだよ。」


「ああ、あの物騒な事件かい。

まだ捕まってないのかい?」


「捕まるどころか怪しい奴もいない。

はてどうしたものかね。」


「もしかして犯人はろくろ首じゃないかい?」


「何を言ってんだい、助さん。」


「いや、聞いたところによると死んだやつの周りに大量の油が溢れていたそうじゃないか。

ろくろ首の仕業じゃないか。」


「ろくろ首だとしたら油を全部舐めていくだろう。

馬鹿言っちゃいけねえ。」


「なら試してみようじゃないか。

今夜、おいらは油を持って外を歩く。

ろくろ首なら釣られてやってくるさ。」


「ふーん、面白い。

もし本当にろくろ首の仕業ならお前に何でもやるさ。」


「ああ、今に見てろ。」


___


「よし油も持ったし念の為しゃもじも持ってきた。

いざとなったらこれで頭をはたいてやる。」


カランカラン


「うん?

後ろに誰かいるぞ。」


カランカラン


「近づいてくる。」


カランカラン


「誰だ⁈

って表さん。」


「何だ助さんか。」


「見回りかい?」


「ああ、助さんはろくろ首見つけたかい?」


「馬鹿にするんじゃねえ。

今にそこの角から出てくるさ。」


「ははは、戯言もそこまでくると面白れえ。

何処の角から出てくるって言うんだい。

ろくろ首がよ。」


「お、おい表さん。」


「何だ?

 えっうわあああ。

 出たーーー」


そこには顔面に笑顔を擦り付けた青白い女の顔が浮いていた。

よくよく見ると首がついており、その首は遥か遠くから伸びてきていた。


「首が首が伸びてやがる。

本当にろくろ首だったのか。

表さん、戦うぞ。」


「何言ってんだい、死ぬに決まってらあ。」


「表さん刀があるだろう。」


「そう言えばそうだ。」


「首を切れええ!」


「うりゃああ!」


ザンッ


「よっし、勝てたぞー。」


「やったな表さん。」


「これでやっと昇進できる。」

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