第22話
❀旅をするタマシイ❀
螢介がするべきことはなにか。亭主には、なにか目的があって、現在の場所へ螢介を向かわせている。その謎を解く鍵は、見うしなってしまった白黒の写真で、老婆に秘められた謎を解かないかぎり、さくや亭にはもどれないのだろう。
……とにかく、まずは写真だ。
あの写真をなくしたらまずい。
どこで落とした?
ポケットから消えた写真を探すため、螢介は「あの、すみません、どなたかいらっしゃいませんか?」と、座敷の
廊下へ顔をだして「すみません、だれかいませんか?」と人を呼んでみたが、夫人が動く気配はなかった。
……相手がこなけりゃ、
おれから行くしかない。
……そうだよな、炎估?
期待はしていなかったが、やはり、十翼は肝心なときに無反応である。ばかにされているような気もするが、相手は
「よし、行くか」
なにもせず待っていても、時間ばかりが過ぎてしまう。螢介は文鎮を左手に持ち、座敷の外ヘでた。ザァザァと激しい雨がふってきた。こんなふりかたのときは、とくに注意が必要だ。
「……ええ、そうよね、わたしもね、それがいいと思いますの。ケイちゃんのためにも、わたしたち夫婦が育てるべきだわ。……うちのひと、雨があるのをいいことに、いつも傘を忘れていくんですもの。それどころか、お
穏やかだった夫人の表情が変わる。スッと立ちあがり、
「なんてお行儀の悪い子。いくらなんでも、勝手にいなくなるなんて。……子どものうちは、
夫人は、湯呑みをふりあげて叩き割ると、
「身ごもったのは、わたし……。ほんとうはね、ケイちゃんは、わたしの子なの……。ねえ、あなた。あなたも、そう思うでしょう? あの憎らしい娘が、わたしたちの子だったら、どんなに愛せたことか……」
夫人が三島家へ嫁いだとき、義理の姉は座敷で寝こんでいた。世話をする家人はなく、ひどく衰弱していた。
〘つづく〙
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