第2話

「こっち向いて」


「えと……」


真夏の国宝級に整った顔を直視することはいまだに慣れない。真夏の大きな掌が伸びてきて私の頬にそっと触れる。


もう心臓は跳ねすぎて呼吸が苦しい。


「真っ赤。マジで俺のこと好きだよな。いけないんだー、義弟おとうとなのに」 


「それは……」


「って俺は実秋が義姉あねだなんて思ったことねーけど。なぁ、俺のこと好き?」


「いや……ちょっと、あの」


「なに? 違うの? 俺のこと好きじゃないの? 俺はこんなに好きなのに」


こうやって組み伏せられて真夏に見つめられたら、もう嘘は何ひとつつけない。言い訳なんかできるはずもない。


「なぁ実秋?」


私だけを見つめて、私の名前を呼ぶ甘い声にいよいよ心臓は限界だ。


「俺、もう一生離してやんないから」


「い、一生?」


「そ。俺、一生実秋に恋すんの。そんでもって一生実秋の願い事叶えてやるから。だから実秋も俺に一生恋してよ」


素直に言葉にだせないけれど、私の真夏への気持ちは一生ものだ。それだけは胸をはって言える。


私は精一杯の想いが届くように、真夏の背中をぎゅっと握りしめた。


「真夏好き……」


「俺も大好きだよ。一生な」


テレビから流れてくるヒーローの台詞と真夏の声が重なり合う。私は目の前の推し彼を見上げながら、そっと瞼を閉じた。



そう──これは私と推しであり義弟である彼が愛しの旦那様になるまでの恋の物語。


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