第55話

「そうだよ。あの日本当に……偶然、酔った恋の声を聞いて俺も驚いたよ。恋なんていう名前なんて珍しいし、思いっきり面影あるし、でも一応咄嗟に確認したら名字まで有川で同じだったから確信したけどね」


「全然……知らなかった」


あの夜、修哉がすぐに私だと気づいてくれていただなんて。


「俺の初恋、恋だったんだ。ずっともう一度会いたいって思ってた。まさかもう一度会えるなんてな」


「あの……私の初恋も修ちゃんだったの」


「ああ。あの夜、それを聞いて俺は酔ってる恋に悪いと思いつつすぐに契約書にサインしてもらったから」


「えっ! そうだったの?」


「あの時、もう絶対に離さないって思ったね」


「〜〜〜〜っ」


そう言って子供みたいに白い歯を見せる修哉に私も顔が熱くなったまま笑顔を返せば、今まで修哉と出会ってから感じていた違和感も疑問も雪がとけるようにあっという間に消えていく。


「恋……」


修哉が私の頬にそっと手のひらで触れると、私の目を真っすぐに見つめた。



「──恋が好きだ」

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