第54話
「これなんだけど」
「え……っ、これ」
修哉が私に手渡したのはA4サイズで淡い緑色をしており『ツナグ学園幼稚園 第50回卒園アルバム』と記載されている。
「ツナグ学園幼稚園って……」
「ああ。俺はここの幼稚園の卒業生なんだ」
「嘘……っ、修哉も?!」
私は思わず口元を覆っていた。
私は両親が亡くなったことをきっかけに祖母の街に引っ越したため卒園アルバムは持っていないが、ツナグ学園幼稚園はまぎれもなく私が通っていた幼稚園だ。
「もしかして恋も?」
「え? あの……私……」
修哉の全てを見透かすような余裕たっぷりの笑顔に私の心臓はとくとくと淡い期待と一緒に音を奏で始める。
「恋に見て欲しいのはこのページ」
修哉が長い指がアルバムの後方の集合写真のページを開けば、そこには懐かしい校庭の風景と一緒に幼い私が男の子と一緒に映っているのが見えた。
「あ……っ!」
「うん。これが恋だよね? そして……」
驚きすぎて声が出ない私を見ながら修哉が写真の中の私の隣を人差し指で指さした。
「こんなこと……」
「俺が誰だかわかった?」
修哉がいたずらっ子のような顔をすると涙が滲んだ私の目じりをそっと拭った。
「しゅう、ちゃん……だったんだね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます