第31話

※※※


副社長室はクローバーインテリアの十階にあるため、私が今までいた三階の営業課のフロアよりも景色がいい。窓の外を見れば月が浮かび、星が無数に瞬いている。


(もう九時か……)


修哉は昼前に挨拶まわりに出てからからまだ戻ってきていない。出かける前に修哉から渡された、得意先の上役とその秘書たちの顔写真のついた名簿を見ながら私は、ため息を吐きだした。


「これ今まで全部一人でやってたなんて……」


修哉が外出してから、副社長室にはひっきりなしに電話がかかってきて秘書である私が電話応対をしたのだが、今日だけでもかなりの数の打ち合わせ依頼があり修哉の予定は再来週までほぼ埋まってしまった。


修哉からスケジュールは詰めれるだけ詰めておくよう言われていたが、共有のエクセルファイルを見ながら私はため息をつかざるを得ない。


「すごいな……」


経営手腕にも長け、誰もが認めるクローバーデザインの次期後継者に相応しい人材とは聞いていたが、こんなスケジュールをこなしながら副社長としての仕事も完璧にするなんて並大抵のことではない。


──コンコンコンッ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る