第21話
修哉はすっと立ち上がると白いシャツを羽織り、テーブルの上から紙を一枚手に取った。
(ま、まさか……記憶ないけど吐いたとか? 何か物壊したとか?)
(あの紙に弁償するものが……書いてある? あぁっ……思い出せないっ)
何度も昨晩の記憶を取り戻そうと首を捻るがやっぱり何も思い出せない。
「これを見てください。忘れたとは言わせません」
私は修哉が差し出している紙を受け取ると私はすぐに目を通していく。そして記載されている文言に私は口をあんぐりと開いた。
「……仮・婚約者……契約……へ?」
「最後まで読んでください」
修哉に促されて最後まで読み進めると、ミミズが這ったような文字で『有川恋』と私の直筆のサインが書いてある。
「そちらの契約書の内容を要約すると、三カ月の仮の婚約期間を経て両者の合意があれば婚姻届けを提出できるというものです」
「ええっ!! 婚姻届?! それに……この人……っ」
私は同じく契約書にサインしている、お相手の名前を見て狼狽する。
だってその名前は──。
「……
(まさか……?)
「はい。四葉修哉は僕の名前で恋さんが働くクローバーデザインの副社長です」
(──!!)
にっこり微笑む修哉を見ながら私はこれでもかと目を見開いた。
「オフレコですが一昨日、ロスから帰国し来週から恋さんと同じ本社勤務の予定です」
私は口をぱくぱくさせたまま言葉が出てこない。
クローバーデザインの現・社長である四葉
「その顔だと……僕のことはご存じみたいですね」
「えと、その……噂レベルですけど」
「恋さんは正直な方ですね、そんなところも素敵です」
(す、素敵……って)
私の顔を火が出たように熱くなる。顔面偏差値国宝級のイケメンからこんなことを言われて、平然を装える人なんているんだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます