第17話
「え? あ、の……」
見上げた男性は艶やかな黒髪を夜風に揺らしながら柔和な笑顔私に向けていた。
(だ、誰……このイケメン……)
「大変失礼ですが……恋、さんというんですか?」
「えっ……と……」
(なんで名前……)
私の頭に浮かんだ疑問符が表情に現れていたのか男性が肩をすくめてみせた。
「すみません。さっき、その……あなたがそう言っているのを偶然聞いてしまったので……」
「あ……はい……有川恋、と言います」
そう答えてから私は慌てて口を手のひらで覆った。
(なんで私、こんな知らない人にイケメンだからって名前……)
「素敵なお名前ですね。ちなみに僕の名前は
「ええっと……ご丁寧にお名前すみません。あとなんか……お恥ずかしいところを色々お見せしてすみませんでした。それでは、あの、失礼します」
私は修哉と名乗った男性にぺこりと頭を下げると、空き缶を拾いゴミ箱に入れる。お酒を飲んでいるせいでやっぱり頭がぼんやりする。
(やばい、飲みすぎた……はやくタクシー乗らなきゃ……)
そう思うのに足元がおぼつかない。
「あ……っ」
私がよろめけば、すぐに修哉が私の背中を支えた。
「危ないな、タクシーで送りますよ」
「え……っ、あの……だ、大丈夫ですから……っ」
「大丈夫というなら、僕こそ恋さんを送るくらい何てことないですよ」
(ちょ……名前……)
修哉に名前を口にされた瞬間、心臓が跳ねてカッと身体が熱くなる。
「行きましょう」
「あ、の……いえ、タクシー拾いますので……」
そう言って私は修哉の手を押し返して道路に向かって歩こうとした時だった──。
(あ……れ……?)
目の前がくるんと一回転して視界が暗くなると同時に私の意識はふわりと宙を舞った。
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