第4話
自分でも少しとがった言い方になったかなと思ったが、私は未希のことが苦手だ。
可愛くて美人で愛嬌があって若くて……私にはないものばかり持っている。別に僻んでいるわけではなく、未希というキャラに私というキャラが性質的に合わないのだ。
「もしかして、一昨日の得意先に間違ってFAX送ったことまだ怒ってます~」
「別にもう謝罪して先方にも納得してもらったから、次から気をつけて貰ったら」
「了解です~良かった~恋先輩が根に持ってまだ怒ってるのかなって」
未希はてへへと笑うと、ペロッと舌を出した。
(根に持ってってなによ)
「次からは間違えないように気をつけまぁす」
「そうしてもらえると助かるわ。あとその語尾伸ばすのも気をつけた方がいいわよ、もう二年目なんだから」
「はぁい」
「じゃあそろそろ帰ってくれる?」
「言われなくても帰りますよ~、明日は博樹さんと素敵なディナー楽しんできてくださいね」
そう言うと、未希はピンヒールの音を響かせながら事務所から出ていく。
「はぁああ……ようやく行ったわね……ってあれ?」
私はふとさっきの未希の言葉を反芻する。
(あした博樹とのデート……なんでディナーって……?)
「あー……余計な事考えちゃだめっ、キリのいいとこまで早くやって帰ろ」
私はうんと両手を伸ばして軽くストレッチしてから、すぐにまだパソコンを叩き始めた。
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