第3話

「そんなことないから。未希ちゃんに残業させてる時点で私の能力不足だし」


「ふぅん、恋先輩って真面目ですよね」


「普通だと思うけど」


未希は自分のパソコンをシャットダウンしたあとも、私のデスクの前で明るめのベージュの巻髪の毛先を指先でくるくる回している。


「あ、そう言えば~恋先輩明日お誕生日ですよね?」


「え……っ、なんで知ってるの?」


私は思わずパソコンの画面から顔をあげた。


「え~、ずっと前に恋先輩がご自分で言ってたじゃないですか~五月一日生まれだから『恋』って名前なんだって」


(そう、だっけ……?)


私はすぐに記憶を辿るが思い出せない。


「彼氏の博樹ひろきさんとデートですか~?」


私は事務所に誰も居ないことを確認してから未希に返事をする。


「……まぁ、そうだけど……その話会社ではしないで」


「今誰も居ないしいいじゃないですか。いいな~去年の懇親会でお会いさせてもらいましたけど~博樹さんって、すっごいカッコいいですよね~背も高いし~雑誌の編集さんだし~羨ましいです~」


「悪いけど、おしゃべりしてるだけならもうあがってくれる?」

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