猫のいなくなる日

岩間 孝

第1話 侵入

 ぼくは、猫ロボNx24-04と感覚の同調シンクロを維持し遠隔で操縦しながら、宇宙人の超巨大宇宙船の中を彷徨さまよっていた。


 宇宙船の通路は、全体が柔らかい光を発し、明るかったが、その材質は分からない。金属のようでもあるし、樹脂のようでもあるそれは明らかにぼくら、地球人の知るものではなかった。


 この宇宙船は当初太陽系外から飛来した恒星間天体と思われていたが、実際は宇宙人が大きな岩の塊に似せて建造したもので、とてつもなく大きなものだった。10年前にもオウムアムアという長さ800mほどの恒星間天体が飛来し、宇宙船では無いかと話題になった。事の真偽は今でも謎のままだが、今回のこれは宇宙船で間違いなかった。


 ぼくは日本の大手電機メーカー「サニー」のペット・ロボ研究所所属の研究員で、体は今現在、地球の衛星軌道上にある宇宙ステーションにある。日本政府に加え、アメリカやイギリス、中国、ロシアの宇宙基地や人工衛星を中継して電波を飛ばし、この猫ロボを遠隔操縦しているのだ。


 ぼくが宇宙船に侵入してからかなりの時間が経っていた。既にかなりの距離を歩き回り、怪しいと予想されていた地点を調べたが、お目当てのものは見つかっていない。


 とぼとぼと通路の橋を歩いていると、向こうから小さな人影が歩いてくるのが見えた。


 小柄で紫色の体。華奢な体に比べ、頭は大きく、黒目だけの目はその顔のかなりの面積を占めている。宇宙人に間違いなかった。


 ぼくは突然のことにびくっと震え、その場に足を止めた。そして、猫ロボの鼻センサーを通じ、追い求めているものの匂いを感じ取っていた。


 これは明らかに猫の匂いだ。


 近づいてくる宇宙人を見ると、確かにその胸に猫をかき抱いている。その様子は猫を慈しみかわいがっているかのように見えた。猫も特に嫌がっているようには見えない。


 一体、こいつらの目的は何なんだ? 何のために猫を誘拐したのだ?

 ぼくは首をかしげ、宇宙人を見つめた。

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