第3章 第2話 Pale Raven(ペーイオ・レーイヴン)

カルは京都市の出町柳(でまちやなぎ)の街中に広がる混乱を見渡し、

眼前に現れた怨獣「Pale Raven(ペーイオ・レーイヴン)」の姿を見つけた。


青白いその姿はまるで天から降臨した神々しい存在のようだった。


青白い羽根を広げ、羽ばたくたびに周囲を照らす輝きは、

普通のカラスの姿とはまったく異なり、まるで神の使いのような存在感を放ち鴨川(かもがわ)を照らしていた。


冬は特に冷え込む京都盆地の夜を一瞬暖かくするかのような輝き。


だが、その暖かさはどこか湿っていて本当は冷え切っている


そんな言葉で簡単に表せない様なオーラだった。




Pale Raven(ペーイオ・レーイヴン)は、まるで何かに命じられるように、

無尽蔵に他のカラスの怨獣を呼び出していた。


まさに王として君臨するその姿は、カルが過去に戦った「Shade Wolf(シェーイドゥ・ウォーウフ)」とまるで同じ戦法を取っているように見えた。


王が他の個体を無尽蔵に召喚し、戦場を混乱に陥れる――カルはその戦法に既視感を覚えた。


「これは……Shade Wolf(シェーイドゥ・ウォーウフ)と同じ戦法だ!!!」


カルは心の中でその事実に気づき、すぐに行動を決めた。


周りの隊員たちが混乱し、指揮を執る白神(しらがみ)と天海トウヤの指示に従っている中、

カルはその声を無視して単身でRei(王)の元へ向かうことにした。


彼の中では、過去の戦いで経験したことが大きな意味を持っていた。


あの時、Shade Wolfとの戦闘で得た教訓が今、この場で活きると確信していた。


「待て、カル!どこ行くねん!?」


白神義影が叫んだが、カルはその声に耳を貸さず、疾風のように駆け出す。


「出しゃばんなや!Aランクごときが」


白神の怒声が後ろから響くが、カルは一度も振り向くことなく進み続けた。


後輩でありBランクの橋本拓海(はしもとたくみ)が慌てて白神に言い訳をするようにしてゴマをすり、

白神に同調する様子を見たが、それも気にする暇はなかった。


カルは一心不乱にRei(ライ/王)を探し、混乱する鴨川周辺を進んでいった。


怨獣(おんじゅう)たちが羽音を立てて周囲を飛び交う中、カルはその動きに集中しながら、ひときわ異質な輝きを放つ王の姿を見つけ出した。


「そこだ……!」


カルはその瞬間を逃さず、密かに温めていた新たな技を準備する。


今までの訓練で磨き上げた「火」と「風」の力を融合させる技――その名も「Blaze Gale Fist(ブレ゜エイズ・ゲーイウ・フィーストゥ)」。


「FIRE! WIND!」


カルは英語で叫び、その瞬間、手のひらに炎と風が絡み合ったエネルギーが凝縮される。


炎が渦を巻き、風がその中で舞い踊り、瞬間的に放たれるその技は、まさにSランク級の威力を誇るものだった。


余談だが掛け声があまりにもダサすぎる、しかしカルはこれをかっこいいと思っている


「――っ!」


一瞬の閃光が、Pale Raven(ペーイオ・レーイヴン)の王(Rei)の前に現れる。


空気が震え、風が爆発的に吹き荒れ、炎がその場を染める。


「いくぞっ!Blaze Gale Fist(ブレ゜エイズ・ゲーイウ・フィーストゥ)」


カルの拳が放たれると、空間が歪み、Pale Raven(ペーイオ・レーイヴン)が目の前に現れたその瞬間、まるで時が止まったかのような感覚がカルを包み込む。


その技は一瞬だけだが、圧倒的な破壊力を持ち、Sランクの魔導士と同等の威力を発揮していた。


「……これなら、倒せる!」


カルは息を呑みながら、技の効果を確認した。


Pale Raven(ペーイオ・レーイヴン)のReiはその一撃を受け、少し後退するものの、まだ完全には倒れていなかった。


しかし、その神々しい輝きは少しだけ鈍くなり、カルに希望を与える。


彼はこれが決定的な一手になることを確信した。


だが、まだ戦いは終わっていない。


カルの心の中で、戦いの火花が再び燃え上がる。


が、その瞬間、一瞬の隙をついてカラスの王-----つまりReiは遥か上空に飛び去ってしまう

「しまった!」とカルは叫ぶのであった。


この瞬間まで魔法で空も飛べる気がカルにはしていたのだが、よくよく考えればカルをはじめとした魔導士で空を飛べる者は誰もいないのだ。


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