第2章 第3話 初討伐
カルは息を荒げながらも、凛として立っていた。
まるで美少女そのもののような外見とは裏腹に、彼女の拳と足には火と風の魔術が絡み、戦場にその力強さを示している。
「こいつ、まだ倒れない…!」
カルの足元から炎が渦巻き、風の魔術が爆発的に放たれる。
彼女は一歩踏み込み、炎をまとった拳でWraith Hound(ゥレーイトゥ・ハーウンドゥ)の腹部に強烈な一撃を加えた。
その衝撃でHoundは後ろに吹き飛び、煙が立ち込める。
だが、それでもWraith Houndは倒れない。その鋭い爪でカルに向かって襲い掛かる。
「おいオカマ君、後ろや!」
白神義影の声が背後から響き、カルは瞬時に反応して背を向けた。
冷気を纏った炎魔術を駆使する白神が、冷徹な目でWraith Houndの動きを封じる。
「間に合わない、白神さん!」
カルの心の中で叫ぶ間もなく、白神は青い炎の槍を手に取り、素早く投げつけた。その槍がWraith Houndの胸に突き刺さり、青い炎の冷気が一気に広がる。
しかし、Wraith Houndは一瞬の隙を見逃さず、カルに襲いかかる。
「くっ、甘く見るな!」
カルはその言葉を声に出し、再び攻撃に転じる。足に風の魔術を纏い、瞬時にWraith Houndの懐に飛び込んだ。拳に火を灯してHoundの顎を狙って強烈な膝蹴りを放つ。すると、Houndの体が弾け飛ぶように後退し、その巨大な体が一瞬にして吹き飛んだ。
その瞬間、槇原桃子が冷たい微笑みを浮かべながら近づいてきた。
彼女の長いピンクの髪が風になびき、周囲に緊張感を与えながらも、どこか余裕を感じさせる。
「でも、カルちゃん。あんたの目立ち方、ちょっと気をつけた方がいいよ?」
その言葉に答えるように、カルは再び目を閉じて冷静さを取り戻した。
戦いの中で、彼女の顔は常に無表情だが、その目は決して相手に負けない強さを持っている。
その時、風間流星が無言で前に出てきた。
鋭い青い目が冷徹に戦場を見つめ、彼の魔力が静かに集まっていく。
冷気の魔術を自在に操る彼の姿は、まさに氷の精霊のようだった。
「お前に手柄はわたさんぞ、カル。やけどここはチームプレイ。こいつを倒せば全員給料が上がるかもしれん」
流星の言葉に、カルは少しだけイラッとくる。
が、たしかにそのとおりでもあった。
彼の冷徹な態度がそのまま戦いの中に投影されている。
しかし、カルにはその余裕がなかった。
Wraith Houndが再び襲い掛かる瞬間、カルはその爪をかわすために素早く一歩退き、再び魔術を発動させた。
「させるか!」
カルの脚に巻きついた風の魔術が炸裂し、空気を切り裂く音が響く。
カルの膝がHoundの胸に突き刺さると、Houndはその場に倒れ、数秒の静寂が広がった。
しかし、すぐにその静寂は破られた。
「まだ終わりじゃない!」
Wraith Houndがその巨大な体を持ち上げ、爪を振り下ろしてカルに再度攻撃を仕掛けてきた。
その瞬間、カルは痛みを堪えながらも、足元から風を巻き上げて再び跳躍。
Wraith Houndの爪をすんでのところで避け、空中から一気に再度膝蹴りを叩き込む。
その瞬間、Houndの体が崩れ、ついにその姿が崩れ去った。
地面に倒れたHoundの体は、もはや動かなくなっていた。
カルは戦いの終息を感じながらも、肩で息をし、同じチームのメンバーたちに目を向けた。
白神、槇原、風間…それぞれが見せる表情にわずかな安堵の色と嫉妬の色が混ざりあって見えたが、カルの目にはまだ戦いの余韻が残っている。
協力し合ってるのか、それとも足を引っ張り合ってるのか。
だがカルはそれでもこう述べた。
「みんな、ありがとう。」
カルは短く言い、ふとその美少女の顔に、僅かな安堵の微笑みを浮かべた。
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