第2章 第2話 怨獣-Wraith Hound-出現
カルが今回所属する、槇原桃子率いるチームは現場である大阪市の都島(みやこじま)に到着した。
大阪メトロ谷町線(たにまちせん)の都島駅(みやこじまえき)の周辺は、普段は賑やかな地元の人や飲食店でにぎわっていた。
ちなみにカルの母校もこの近くにある。
しかし、今夜はどこか異様な静けさが漂っていた。
薄暗い路地裏から時折聞こえる、かすかな物音。
その異変に気付いた人もいるが、そんな人も警戒しながら日常を続けていた。
突然、どこかで不気味な咆哮が響き渡る。
その音は、1月の冷たい風を伴って、周囲の空気を震わせた。人々は立ち止まり、恐れおののく。
目の前の街灯が揺れ、まるで何かが迫っているかのようだった。
「まさかあれが?」
カルは人混みをかき分け、駅のホームから視線を逸らして周囲を見渡す。
次の瞬間、路地の奥から現れたのは、骨のように白くて細長い体を持つ、恐ろしい存在—Wraith Hound(ゥレーイトゥ・ハーウンド)と呼ばれる怨獣であった。
呼ばれるというか、額田さんがそう呼称していた。
獣のような姿は、まるで亡霊のように煙のような霧に包まれ、周囲の人々を凍りつかせる。
その目は真っ黒で、何もかもを飲み込むような深い闇を湛えていた。
地面を引きずるように歩きながら、Wraith Houndは低く唸り声をあげ、周囲の物を無差別に破壊し始めた。通行人が逃げ惑い、悲鳴が上がる中、カルはその怨獣に心を奪われた。
「止めなきゃ。」
彼の心臓は激しく鼓動し、冷たい汗が背中を流れる。カルは、点呼の際に聞いた話を思い出していた。
Wraith Hound(ゥレーイトゥ・ハーウンド)をはじめとした「怨獣(おんじゅう)」は、恨みや悲しみを抱える者たちの魂が生み出すモンスターだ。人々の負の感情が集まる場所に現れるという。
その姿は、まるで彼自身が抱える過去の影のようだった。
「何とかしないと…!」
意を決したカルは、立ち尽くす人々の間をすり抜け、怨獣に向かって駆け出した。
背後で、泉水なつきの声が響く。
「カルちゃん、あぶない!」
振り返る余裕もなく、彼は目の前のWraith Houndに向かって突進する。
内なる怒りと恐怖をエネルギーに変えて、カルはその身に魔力を集めていく。
自分が何をするべきか、何を守るべきか、それを思い出しながら。
Wraith Hound(ゥレーイトゥ・ハーウンド)がカルの姿を認識した瞬間、冷たい視線が彼に向けられる。
怨獣は静かに、しかし確実にその存在を認識した。カルはその一瞬を感じ取り、覚悟を決めた。
「この怨念を…断ち切る!」
カルは拳に炎をまとわせる。まばゆい炎の光が闇の中に差し込み、Wraith Houndの姿を一瞬照らし出す。カルは全力で突進し、怨獣に向かってその拳を向けた
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