第1章 第2話 弟子入り


僕(カル)は魔導士イェシカに才能を見出され、

身柄を解放された後、彼女(彼?)に連れられて不思議な世界へと足を踏み入れることになった。


あれから数週間が経ち、いつの間にか魔導士としての訓練が始まっていた。

心のどこかで期待と不安が入り混じり、興奮する自分を感じていた。


訓練が行われるのは、大阪府の箕面市(みのお)の地下に広がる魔導士連盟の広大な施設。


そこには見たこともない魔法陣や、様々な機械が並び、壁には魔導士たちの肖像画が飾られていた。


彼らは、魔法の力で人々を守ってきた伝説の英雄たちだと聞かされている。

その中でも特に「聖帝様」と呼ばれる伝説の魔導士は、神様の様に崇拝されている。

まさに、異世界に迷い込んだような感覚だった。


「カル、今日は新しい魔法を教えるよん。」イェシカの声が耳に心地よく響く。


彼女(彼?)は真剣な表情で魔法陣の前に立ち、説明を始めた。

彼女の言葉には力強さと優しさが同居していて、僕の心を掴んで離さない。

彼女の赤い髪が、光の中で揺らめき、神秘的な雰囲気を醸し出していた。


イェシカは関西弁と標準語が入り交じった言葉を使う。

大阪の中でも箕面市(みのお)をはじめとする大阪北部の地域、いわゆる「北摂(ほくせつ)」では関西の中では珍しく標準語を話す人も多いらしい。


同じ大阪でもカルの生まれ育った地域とは全然違うみたいだ。


一方、北摂出身でないカルも標準語を話すことがあるが、それはカルがオタクだからである。

オタクの関西人もまた、アニメやゲームの影響を受けて標準語で話す傾向がある。


「この魔法は、風の力を使ったものやね。まずは、風を感じるところから始めようか。」


イェシカが手をかざすと、彼女の周囲に風が巻き起こり、柔らかな気流が僕の顔を撫でた。


その瞬間、胸が高鳴り、心の中で何かが目覚めるのを感じた。


「僕にもできますかね……?」緊張しながらも、彼女の真似をして手をかざす。


最初は何も起こらなかったが、イェシカの視線を感じながら集中するうちに、じわじわと風の感触が指先に伝わってきた。


やがて、ほんの少しだけ風が動き出す。「できました、できましたよ!」喜びが全身を駆け抜ける。


「そう、それが君の魔法だよ、カル。こんなにはやく身につけるなんて君は天才かもね。」

イェシカの言葉に、胸が熱くなる。


自分が特別な存在だと思ったことは今までなかったから、その言葉はまるで魔法のように僕を変えていった。

イェシカが師匠であることに、心からの感謝を感じていた。


このようにして、2ヶ月間の訓練が続いていった。


日々の特訓を重ねるうちに、徐々に魔法の使い方が身についていき、ボクの心に芽生えたのは、イェシカに対する憧れだった。


彼女と過ごす時間が楽しくて、次第に「イェシ姉」と呼ぶようになっていた。


彼女の優しい微笑みや、時折見せる真剣な表情が、僕の心を掴んで離さないのだ。


一緒に訓練を重ねる中で、イェシカはただの師匠という存在を超え、僕にとって特別な人になっていった。彼女が教えてくれる魔法は、ただの技術だけではなく、僕の心に自信を与えてくれた。


毎日が新しい発見と挑戦に満ちていて、まるで人生が色づいていくようだった。


また、イェシカは自由人だった。


本来なら仕事中のはずなのに、たまに僕を外に連れ出しては箕面萱野駅(みのお・かやのえき)前のキューズモールを一緒に散歩したり、一駅あるいて箕面船場(みのお・せんば)駅まで連れて行ってくれたりもした。


大阪の北部にあるこの街は遠くに剣尾山(けんびざん)が見える。山を切り開いて街を作ったそうだ。


駅前はビルの開発ラッシュがすすんでいるが、全体としては緑も多くてとても空気がおいしい場所だ。


大阪の最重要路線である大阪メトロ御堂筋線(みどうすじせん)の終着駅もここ、箕面萱野(みのお・かやのえき)だ。


日本魔導士連盟の大阪支部は箕面萱野(みのお・かやの)駅から徒歩10分のところにあるので、通いやすい。


カルが知っている大阪とは雰囲気が違う----もう一つの大阪。それがまたカルには新鮮に映った。




「君は一流の魔導士になれるよ。」


イェシカのその言葉は、僕にとって最高の褒め言葉だった。

特訓の成果を認めてもらえたことで、さらに彼女への思いが強くなる。

あの頃、卑下していた自分を取り戻すことができたのは、すべてイェシカのおかげだ。


訓練が進むにつれ、彼女に対する恋心も膨らんでいった。


彼女と一緒にいると、心が踊り、胸が高鳴る。魔法の訓練が、恋の予感を育んでいく。


イェシカは、ただの魔導士ではなく、僕の人生を変えてくれた特別な存在なのだ。


そんな日々が続く中、僕は自分の気持ちを伝えたいという衝動に駆られた。


しかし、彼女の師匠としての姿と、心の中で感じている憧れの間に、僕は戸惑いを感じていた。


それでも、少しずつ進化していく自分の魔法と共に、勇気を振り絞って言葉を紡ぐ日を夢見ていた。


新たな自分を見つけた僕は、これからもイェシカと共に成長し、魔導士としての道を歩んでいくことを決意した。


「イェシカさん!ボクここに就職したいです!」カルは言う。


イェシカは答える「今の感じを見るとDランク以上はあるし、正社員として雇用されると思うよ」と


魔導ランクはS,A,B,C,D,E,Fの7等級があるみたいだ。


Eランク以上が魔導士と呼ばれ、Fランクは非適合者と呼ばれる。

非適合者たちは日本魔導士連盟大阪支部の上のフロアにある倉庫で雑務をする、らしい。



まあとにかくイェシカと共に過ごす日々が、どれだけ素晴らしい未来に繋がるのか、今はまだわからない。


しかし、イェシカと共にいる限り、僕の心には希望の光が満ちているのだった。

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