第8章 「策謀の網と、逆襲への胎動」
【第8章・パートA】
1.夜が明ける神戸港
レジスタンスとの会合を終えたのは、もう深夜に近い時間帯だった。
地下倉庫内では激しい議論が交わされ、道場塔への攻撃に向けた大枠の方針が固まった。狭い地下空間に集った人々の熱気は、薄暗い照明に照らされ、不穏なほどに揺れ続けている。
「それじゃ……今日はもう解散ということで。具体的な作戦書を作り、数日内に再度集まります。参加者には個別に連絡するので、それぞれ準備をお願いします。」
まとめ役の宮木(みやき)がそう宣言すると、周囲の者たちは次々に立ち上がって散会し始める。
綾瀬(あやせ)涼香(りょうか)が、佐伯(さえき)ライチ、藤浪(ふじなみ)卓矢(たくや)、春口(はるぐち)幸奈(ゆきな)を手招きしながら出口へ向かう。汐崎(しおざき)祐真(ゆうま)も黙ってついて来る。
「みなさん、本当にお疲れさま。今日はここまでで大丈夫よ。私が見送るわ。」
綾瀬はほっとした表情を浮かべているが、その目には明らかな疲労感がにじんでいた。
「次の大規模会合までは、各自で備えてくださいね。道場塔の破壊計画が本格化するのは、ほんの数日先かもしれないし……。」
「分かりました。俺たちも師匠や道場のことをもう少し整理して、装備や体づくりをしておきます。すぐに呼ばれたら駆けつけますよ。」
佐伯が静かに力こぶを作ってみせる。藤浪と春口もそれぞれ気合を込めて頷いた。
「俺も、連絡があればすぐ向かう。中途半端にやっても意味ねぇからな、徹底的にやるぞ。」
汐崎が髪をかき上げて吐き捨てるように言う。仲間に対する敬意というより、敵への復讐心が剥き出しの態度だが、強い戦力になるのは間違いない。
倉庫の外へ出ると、空はほんのりと白み始めていた。いつの間にか時間は早朝に近い。雨は止み、湿っぽい潮風だけが吹いている。
「今日もあんまり寝てないわね……。」
春口が苦笑いし、藤浪は「まあ、これからアパートに戻って少し仮眠とるしかないな」と肩をすくめる。
「では、ここでお別れね。私たちレジスタンスは極力人目を避けて動くから、連絡だけでやりとりしましょう。」
綾瀬が礼儀正しく頭を下げる。佐伯たちも「本当にお世話になりました」と一礼する。汐崎は小さく手を挙げるだけだ。
「じゃあな。次に会うときは作戦の前か、あるいはその最中ってことだろう。気ぃ抜くんじゃねえぞ。」
汐崎がそう呟くと、四人(佐伯、藤浪、春口、汐崎)はそれぞれ違う道へ散っていく。綾瀬はその姿を見送った後、しっかりと扉を閉ざして倉庫街の奥へと消えていった。
2.大阪へと戻る車中
再びタクシーを捕まえ、三人は三ノ宮駅方面から大阪へ戻る。夜が明けたばかりの街は通勤ラッシュ前の静けさが漂う。
「さすがに疲れた。帰ったら風呂入って寝よう……。」
佐伯がタクシーの後部座席でウトウトし始める。春口は窓の外を眺めながら、「でも何か変な車とかバイクに尾行されてない?」と警戒している。
「今のところ、そんな感じはないな……後ろの車は普通にタクシーみたいだし……。」
藤浪が後部窓から確認し、「大丈夫そうだ」と答える。
神戸県や主任・吉良(きら)が暗躍している事を思えば油断は禁物だが、さすがにまだ行動を起こすタイミングではないのだろう。
「ふう、なんか一気に進展したね。道場塔の場所についてはまだぼんやりだけど、レジスタンスがちゃんと裏取りをしてくれそうだし……。」
春口が思い返すように呟く。
「そうだな。あとは師匠がどこまで回復するか……。作戦直前に合流できるなら心強いんだけど。ジャッカル戦で脇腹を酷くやられてるし無理はさせられない……。」
藤浪が憂いを帯びた表情を見せる。佐伯もうっすら目を開けて「先生は根性で動きそうだけど、下手すると本当に命取りになるかもしれない」と同調する。
タクシーは高速道路に乗り、しばらく走った後、大阪市内へ入っていく。外は完全に朝日が昇り、通勤車両が増え始めた。
「やっぱ家で寝よう……。明日は空手の師匠に顔を出すかな、最近道場破りばっかりだったし、基礎をやり直したいんだ。」
佐伯が大欠伸(あくび)をしながら言う。藤浪と春口も「そうしよう。各自、体調整えておこう」と顔を見合わせ、アパートへ向かう準備をする。
3.主任・吉良の密談
そのころ、神戸県庁ビルの奥。
早朝にもかかわらず、主任・吉良(きら)は部下を呼び出し、デスクに顔を寄せ合うようにして情報の共有を図っていた。監視カメラや情報屋を通じて、レジスタンスの動きを感じ取っているのだ。
「どうやらレジスタンスが大きく動き出したようです。昨夜から今朝にかけて、例の倉庫街で密会があったとの報告が。」
部下が静かに報告する。吉良は眉間にシワを寄せ、「ふん、やはりな……。奴ら、道場塔への攻撃を本格的に計画しているな。」と呟く。
「はい。目的は道場塔の破壊もしくは制圧。ただ、内部構造はおろか、入り口の位置も把握できていないはずです。問題は……やはり“あの三人”と“汐崎”でしょうか。」
「峯岸の弟子か。ジャッカルを倒すほどの実力がある……侮れん。汐崎も捨て身の狂犬だしな。奴らが揃うと厄介だ。」
吉良は机の引き出しを開け、何枚かの書類を取り出す。そこには警備組織の配置図や、道場塔完成予想図が描かれている。
「しかし、我々が先に奴らを罠にかければいいだけの話だ。彼らが乗り込んでくる前に、餌を撒いて誘い込み、塔の警備システムを試験運用できるじゃないか。」
「そうですね。最新式のAIガントレット部隊や、武装ドローンの実験もできますし、ちょうどいい機会かと。」
部下は不気味な笑みを浮かべる。吉良も同調するように薄く笑い、「主任室」に貼られた地図を見つめる。
「さらに“神戸県長官”から、道場塔を少し早めに稼働させろと言われている。完成前でも構わん、テストを兼ねてどんどん使えとさ。何しろ兵器開発のスポンサーも急かしてるからな。」
吉良は言葉を区切り、部下に目をやる。
「わかったな。道場塔の内部警備網を段階的に起動し、奴らが侵入してきたら一網打尽。必要ならサンプルとして捕縛し、使えそうな人材は改造実験にも回せる。……そういう運用も面白いだろう。」
部下は背筋を伸ばして応じる。
「了解しました。警備チームに指示を出し、完成前の段階で“準稼働”に移行させます。侵入者がいれば堂々と“排除”というわけですね。」
「そうだ。任せたぞ。……峯岸道場の連中も、せいぜい命をかけて来ればいい。ジャッカルが失敗した借りを、今度こそ返してやる。」
吉良の唇が薄く歪む。窓外には、神戸の街が朝日の中に光っている。だがこの光は、神戸県が抱える暗黒のベールを照らし出しはしない。
4.師匠・峯岸の逸る思い
同じ朝、大阪市内の病院。峯岸(みねぎし)光雲(こううん)は車椅子に乗せられ、院内の中庭を散歩していた。わずかに咲いている花を見ながら、痛む脇腹を抑える。
「先生、あまり無理しないでくださいね。昨日の検査結果でも、まだ安静が必要って……。」
付き添いの看護師が声をかけるが、峯岸は「うるさい。これしきで寝ていられるか」と小さく唸る。
(弟子たちが危険な目に遭ってるのに、こんなところでノンビリ……。)
内心は焦りと苛立ちでいっぱいだ。師匠として、彼らを守れない不甲斐なさも苦いものとして胸に残る。
ジャッカルとの死闘で受けた傷は想像以上に深刻らしいが、峯岸は一刻も早く退院し、作戦に加わりたいと考えている。
「まあいい、入院なんざ適当に済ませて、あと数日で俺は動く。無理やりでも退院してやるさ……。」
峯岸は声にならない決意を噛み締める。
中庭のベンチで休もうとすると、スマホが振動した。取り出してみると、なんと汐崎祐真からの着信――名前登録はしていないが、先日交換した番号だ。
「……あの荒っぽい男か。なんの用だ?」
峯岸は怪訝な顔で電話に出る。すると汐崎の低い声が聞こえてきた。
「おい、峯岸先生か? あんたの弟子どもはレジスタンスと組んで動いてるようだが、あんたはどうするつもりだ?」
「お前が言うことじゃないが……あいつらを頼む。俺はいずれ退院して合流する。まだ満足に拳が振れない体だがな。」
峯岸が苦笑する。
「ふん……一応、お前の弟子には世話になってる。マジで死なせたくないんだよ、俺も。道場塔を潰すときは大乱戦になるだろう。早く体治して来い。」
まさか汐崎がこんな言葉をかけてくれるとは思わず、峯岸は少し驚く。
「ふ……お前らしくないな。だが、ありがとよ。俺も加勢できるよう、できるだけ早く出る。お前も……無茶するなよ?」
電話の向こうで笑う声が微かに聞こえる。
「俺が無茶してるのは今に始まったことじゃねぇ。だがまあ、連絡くれて嬉しいぜ。じゃあな、先生。」
ブツッと電話が切れ、峯岸は思わず吹き出しそうになる。
(あの男も、妙な形で仲間意識を持ってるらしい。……俺も頑張らねばな。)
師匠は傍らの看護師に「部屋に戻る。リハビリをもう少し積極的にやらせろ」と告げ、車椅子を漕いだ。目には消えない炎が宿っている。
【第8章・パートB】
5.作戦準備の日々
一方、佐伯たち三人は大阪のボロアパートで朝から雑多な準備に追われていた。
春口(はるぐち)はAmazonや通販で頼んでいた医療セットや防具が届き、段ボールを開封しながら点検。
藤浪(ふじなみ)はインターネットで各種情報を検索し、神戸県の動きや噂をチェック。
佐伯(さえき)は道場で基礎体力づくりに励み、夜はメモを広げて作戦アイデアを練っている。
「作戦までに数日しかないとしたら、時間が足りないな……。でも少しでも装備を揃えないと。」
春口が包帯や消毒液、簡易止血帯などをまとめながら呟く。藤浪は「実質、近代兵器相手に手作りの道着とサポーターじゃ不安だけど……仕方ない。」と肩をすくめる。
「どうする? 本格的な防弾チョッキとか買えればいいけど、そんなルートないし、あっても怪しまれるかも。しかも動きにくくなるしな……。」
佐伯が悩ましげに言うと、春口は「最終的には機動力重視かな……身体ひとつで切り込むしかないか」と覚悟を口にする。
「峯岸先生がいれば少しは安心感も増すけど、脇腹の傷が間に合うか……。」
藤浪が病院へ電話してみるが、「まだ安静が必要です」と医師から止められているらしい。
「まあ、師匠なら何とかするだろ……。とにかく、こっちも準備を急ごう。」
こうして三人は、それぞれ自主トレーニングを再開したり、腕力・脚力を補うためのトレーニング器具を買い足したりと、慌ただしい数日を過ごすことになる。体を動かさないと落ち着かず、夜には筋肉痛と疲労で倒れ込むほどだった。
6.綾瀬からの通信
ある夜、アパートに戻った佐伯たちが缶ビールを軽く飲みながら一息ついていると、春口のスマホが鳴った。画面には綾瀬涼香の名が表示されている。
「もしもし、綾瀬さん? はい、みんな揃ってますよ……えっ、もう作戦の日取りが決まったんですか?」
スピーカーに切り替えると、綾瀬の声が明るく響く。
「ええ、レジスタンス内で話がまとまりました。3日後の深夜に道場塔へ侵入する計画です。まだ細かい部分は詰めきれていないけど、少なくとも“夜間奇襲”の方針が固まったわ。」
「3日後……やっぱり早いですね。でも早く動かないと完成されてしまうし……。」
藤浪が苦い顔で答える。綾瀬はさらに続ける。
「ええ、レジスタンスにも限界があるし、神戸県が兵器を運び込んでるって話も確実みたい。これ以上待ったら状況が悪化するばかり……。あとは少数精鋭で行くしかないの。」
「なるほど……参加メンバーは、俺たち3人と汐崎、あとはレジスタンスから何人かですね?」
佐伯が確認すると、綾瀬の声が少し暗くなる。
「ええ、ですが私たちは大部隊を出せません。敵の警戒を逸らすために外部で攪乱工作をするので、実際に突入するのは……合計で十人弱になるかもしれないわ。」
「十人弱……それで道場塔に潜入……かなり厳しいですね。」
春口が不安を漏らす。だが綾瀬も「もっと集めたいけど、スパイや情報漏洩のリスクが高すぎるの」と苦悩している様子だ。
「場所や日時は改めて詳細を送ります。山中へのアプローチルートや、仮の作戦図も。それまでに体を整えておいて。危険な賭けになるけど、私たちも必死でサポートします。」
「分かりました。ありがとうございます、綾瀬さん……。死なないようにします。」
春口は力強く返事する。電話を切り、三人は顔を見合わせる。
「3日後……早いけど、避けられないな。あとは師匠に伝えて……来られるかどうか。」
佐伯が呟き、藤浪はうなずく。
「先生が無理なら、俺たちだけで行くしかない。下手すりゃ帰れないかもな……。」
「でも、何としても道場塔を叩かないといけない……よし、腹をくくろう。」
春口が目を閉じて自分に言い聞かせるように言う。こうして3日後の“決戦”が、はっきりと目の前に迫った。
7.病室の師匠、決断の時
翌日、佐伯は病院を訪れ、師匠に3日後の作戦開始を伝える。
「師匠、医者に止められてるのは分かってます。でも、もし無理なら、やめてください。俺たち、師匠の体が心配で……。」
佐伯が脇腹の様子を気遣いながら言うと、峯岸はベッドに腰掛けて難しい顔をする。
「確かに、体は完治してない。だが、弟子たちを死地に送るわけにはいかん。俺は行くぞ。どんな手を使ってでも退院してやる……。」
峯岸は拳を強く握りしめる。佐伯は思わず詰め寄る。
「でも、先生……無茶しないでくださいよ。下手すりゃ命取りですよ?」
「構わん。お前らが危険を冒すなら、俺が行かずしてどうする? 師匠として当然だろうが……!」
師匠としての責任感とプライド。峯岸は頑固だ。佐伯は説得しきれないと覚悟して、「分かりました」と俯(うつむ)く。
「じゃあ……無理だけはしないで。本当に限界を感じたら退いてくださいね。」
「ばかやろう、そんな余裕があればいいがな……フッ。とにかく、作戦当日は俺も駆けつける。お前たちは先にリハビリだのなんだの言ってる暇はないだろうが……気を緩めるなよ。」
峯岸は決意を新たにする。弟子を死なせないため、命がけで拳を握るのだ。
佐伯は師匠の手を握りしめ、「先生……待ってます」とだけ言い残して病室を出る。脇腹を痛めた姿は痛々しいが、峯岸の目は老獪(ろうかい)な闘志で光っていた。
【第8章・パートC】
8.決戦前々日の夜:偶然の邂逅
作戦決行まであと2日。
佐伯と藤浪は道場での最終稽古を終え、春口は防具やメディカルキットを再点検し、各自が準備に追われていた。
夜、コンビニへ買い出しに出た春口は、なんと偶然にも東雲(しののめ)ジュリとバッタリ出くわす。
「えっ、ジュリさん!? こんなところで……?」
春口が驚きの声を上げると、ジュリはサングラスを外し、「あら、春口さん!」と嬉しそうに笑う。どうやら変装用の服装で、大阪に来ていたらしい。
「何してるんですか? 神戸県に狙われてるんじゃ……。」
春口が声をひそめると、ジュリは肩をすくめる。
「ええ、私もいろいろ大変なのよ。でも“あの会合”に行くわけにもいかないから、影から情報を集めてる。ビジネス関係で大阪へ来たついでに、あなたたちの様子も見ておこうと思ってね。」
「そうだったんですね……でも危険では? 神戸県の手がここまで伸びてるかも……。」
春口が心配するが、ジュリは「ご心配なく。私も一応、逃げるルートくらい用意してるわ」とウインクする。
「ところで、作戦は3日後なんですよ。私たち、いよいよ道場塔に突入します……。ジュリさんは参加しないんですよね?」
春口が率直に尋ねる。ジュリは目を伏せながら頷く。
「うん……私は裏で情報操作やスポンサーとの駆け引きがあるの。表立って神戸県に逆らったら、私も終わり……でも、あなた達を見捨てるわけじゃない。何かできることがあれば言って。」
「そうなんだ……。じゃあもし私たちが道場塔に入って、何らかの証拠とか、やばい研究資料とか持ち出したら、ジュリさんが外で拡散したりできるんですか?」
春口が提案すると、ジュリは「もちろん! どんな情報でも大歓迎よ。国際マスコミや企業とのパイプは私が持ってるから、内部から暴露すれば神戸県も揺らぐはず」と張り切る。
「ありがとうございます。気をつけてくださいね。本当に……無事でいて。」
春口が手を取ると、ジュリは微笑み返す。束の間、彼女の瞳には憂いの影が映るが、それでも笑顔を作って別れを告げた。
「じゃあ、作戦成功を祈ってるわ……必ず生き延びてね。」
そう言うと、ジュリは夜の雑踏に消えていく。春口はしばらくその背を見送った後、息を整えてコンビニへ向かう。いよいよ総力をかけた戦いが始まるのだ。
9.決戦前夜:各自の思い
作戦前日。
レジスタンス側では連絡が飛び交い、夜には最終打ち合わせがオンライン会議で行われた。佐伯たちはZoom的なツールで参加し、詳細な進入ルートや連携のサインを確認する。
「山に入る時間は深夜0時ごろ。登山口で合流し、そこから分隊ごとに行動。入り口は北側の警備が薄い箇所を狙う……。ただし、敵に気づかれたら一気に戦闘になる。」
宮木の説明は簡潔だが、危険が随所に潜んでいる。汐崎も画面の向こうでニヤつきながら「ようやくか……待ちくたびれたぜ」と言っている。
「先生、間に合うかな……。」
Zoom終了後、春口が呟く。佐伯と藤浪は眼を伏せるようにして黙る。師匠の自発的な行動を止めることは難しいが、体調が万全ではないはず。
「まあ、先生の気持ちは分かるし、無理はさせられないけど……来るなら来るで、できるだけフォローしよう。」
佐伯が言葉を引き取り、三人は深いため息をつく。
部屋の蛍光灯だけが静かに照らす。時計は深夜0時に近い。明日は一日を使って最後の準備をしたら、その翌深夜には作戦が始まる。
「ここまで来たら……あとはやるしかない。死ぬも生きるも一蓮托生だ。」
藤浪が拳を握り、二人もうなずく。いつもなら怖さや不安が募るが、いまは不思議と心が冴え渡っている。ついに“道場やぶり”の極限を超える戦いが迫っているのだ。
10.第8章の幕
こうして、レジスタンスと峯岸道場、そして汐崎の連携による“大作戦”がいよいよ動き出す。
主任・吉良もまた、道場塔の一部稼働を開始し、侵入者を待ち構える構え。一方で東雲ジュリは裏から情報拡散の準備を進め、峯岸光雲は傷だらけの体を奮い立たせて弟子たちの元へ向かおうとしている。
神戸の山にそびえ立つ“道場塔”が、戦いの舞台となる日は、刻一刻と近づいている。そこで待つのは、血塗られた死闘か、それとも新たな未来への一歩か――。
――第8章、幕。
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