東方大蛇線後編

【上駅】 邪神の妻

 六魔天駅から三ヶ所目。

 東方大蛇線外回りでやって来たのは、上駅。

 海沿いにある駅。

 その駅の、一番乗り場に祥観達はいた。

 しかし、三人の中で祥観は駅の意味が解っていない。

 なぜ、東方大蛇線と言う環状線の下にある駅なのに、『上駅』なのか?

「うーーーーーーん………………」

 祥観は、考えに考えた。

 そして、思わず心の声が漏れた。

「ぜんぜん上じゃないじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「ふうぅ………………だったら、駅を調べよーーーーーーーーーーーーーーーーーーう!」

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 祥観の心の声に反応したレミング。

 彼女は、やまびこのように大きな声を出した。

「うううううう……………………………………………………祥観の子と好き過ぎよぉ!」

 ハートは耳を畳ながら、レミングの行動にツッコんだ。

「ごめん、ごめん。けれど、入ったら解るよ!」

 祥観とハートは、レミングを先頭にホームの階段を下りた。


 上駅地下一階。

 祥観達がやって来たのは、船がある水路。

 どうやら、ここは、歩いて先へ行くことは出来ないようだ。

 しかし、祥観は迷路の攻略法を知っていた。

「ねぇ、裏道を使おう。そうすれば、目的地に着くよ!」

「祥観。解き方教えてくれてありがとう」

「へへぇ、どういたしまして。じゃあ、行こう!」

「教えてくれたのは、嬉しいよ。けれど、やっぱりやめとく」

「祥観が考えている間に小石を投げたんだ。バリアみたいのなのもので弾かれてたよ」

「そんな…………別の方法をやってみる!」

 祥観は、裏道を使う作戦を諦めた。

 そして、祥観、レミング、ハートの順に船に乗った。

「それじゃあ、行くよう! レミング、左手で壁触って!」

「あ、ああ」

 ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……

 祥観は、船をオール漕いで先へ進む。

 それと同時に、レミングは左手で壁触った。

 左へ左へ左へ左へ………………

 ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……ギー……ギー………………

「ええ? スタートに戻ちゃたぁ…………」

「この後、どうすれば、いい?」

「祥観の考えは、当てにならないわ、あたしとレミングだけでやりましょう!」

「いいや、僕は、祥観に従う!」

「ええ? 祥観の作戦外ればかりじゃない!」

「正解でも不正解でも、祥観の考えは正しいと僕は信じる。だから、祥観のことは、見捨てない!」

「いいわ、勝手にして!」

「それにしても、漕いでもないのにこの進んでるねぇ」

「漕いでもないのに進んでいる?」

「だって、この船から見えたスタート地点、もう見えないよ」

「見えない? と言うこは…………」

 ザブンッ!

「ううん?」

 ザバンッ! ピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチッ!

 レミングは、話している最中に水路の水に腕を突っ込んだ。

 それで出て来たのは、三匹の鮭。

「この船は、何もしなくてもゴールへ着く。この鮭がその証拠」

「すごいねぇ、レミング!」

「ああ!」

 レミングのファインプレイにより、祥観はオールを閉まった。

 そして、祥観達はゴールへ着くのまで、鮭の塩焼きを楽しむことにした。


 目的地に着いた。

 水路を泳いでいた鮭は、海へ移動。

 船は囲いにはまって動き止まっている。

「ふぅぅぅぅぅぅ…………美味しかったぁ………………」

「嬉しい残念だよ」

「何だか矛盾したニュースだね」

 祥観は、レミングが差す方を見た。

 そこには、『セルキーカフェ』と書かれた看板。

 そして、その看板の奥には、黒い斑点模様のパーカーをしたモンスター娘と銭柄のパーカーをしたモンスター娘が合計十人いる。

 どうやら、ここに住むモンスター娘はセルキーのようだ。

「祥観。グルメデートはまだ終わらないよ!」

「いつからデートになったの? と言っても、焼き鮭は、おやつだからこそねぇ!」

「僕もだよ!」

「さぁ、行きましょう!」

 ガチャンッ!

「…………また、あたしを忘れてる………………………………」


 セルキーカフェのテーブル席。

 広がる海が見える店内で、レミングは、はメニュー表を祥観に見せた。

「祥観。好きなメニューを選んでいいよ」

「うーん……けれど、このメニュー表、メニューが一つしかないよ」

「ええ?」

 レミングは、慌ててメニューを確認した。


 メニュー表一覧


 上上上3

 上上上上9

 上上3

 丼


 5,000マギア


 「うーん。どうやら、暗号みたいだなぁ」

 レミングは、じーっとメニュー表の暗号を見続ける。

 しかし、祥観は、メニュー表の謎がすでに解っていた。

「③⑨③丼二つくださーい!」

「かしこまりましたウエー!」

 斑点模様のパーカーと白い水着を着た爆乳のセルキーやって来た。

 彼女は、置き時計を一つ持っている。

 どうやら、その時計で時間をはかっていたようだ。

「残り七分五十一秒。まさか、あたし達の暗号を解く天才がいたとはウエ!」

「へへぇーーーーーん!」

「では、③⑨③丼を持っていくウエ!」

「もう、解いたよ!」

「迷路を解くより早いなぁ」

 その後、祥観とレミングは、③⑨③丼を食べた。

 一方、ハートは③⑨③食べられないため水で我慢。

 そして、にこやかに進む食事はやがて終わりを迎えた。

「ごちそうさま!!」

 食事を終えた二人は、誰がお金を払うかを相談した。

 そして、お金を払うことになったのは、レミング。

「では、この板に手をかざしてください!」

「うん!」

 ヒヨォォォーーーーーーンッ!

「決済完了っと!」

 そして、祥観達は、店を後にした。


 水路に戻る。

 祥観達は、ホームに戻る方法を相談した。

 しかし、水路は、一方通行で戻ってくることは出来ない。

「どうしようかしら…………うーん…………………………」

 すると、ハートが向かいの通路の気づく。

「あ、あれ見て!」

「ううん?」

「うん?」

 祥観とレミングは、壁書かれた暗号に気付いた。

 そこには、『セドナ様がお待ちです』と書かれている。

「行ってみましょう!」

「うん!!」

 ジボンッボンッ!

 祥観達は、船を通路代わりにして奥の通路へ移動。

 そして、壁に触った。

 ブユンッ!

「やっぱり!」

「魔法結界だったようだね!」

「では、行きましょう!」

 タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ……

 祥観達は、階段を駆け下りた。


 祥観達は、上駅東方大蛇線4番乗り場。

 しかし、そこはただ薄暗いだけセドナらしきものはどこにもいない。

「あかしいなぁ………………」

「確か、ここに来るはずだけれど………………」

「ううん?」

 ザッザバァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!

「あ、あれを見て!」

「ううん??」

 祥観とハートが線路の向こうを見た。

 何と、線路が一瞬で水浸しになったのである。

 そして、ホームギリギリに迫るほどの大きな魚影が徐々に近づいてきた。

 ザバァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!

 シャァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーー…………………………

 現れたのは、下半身がアザラシで上半身が人間の爆乳全裸のモンスター娘。

 焦げ茶色の髪からは、シャワーのような水を降らしていた。

「あんたが、セドナだね」

「久しぶりだ、レミング!」

「ええ? ふ、二人共、初対面じょないの?」

「そうだよ、祥観。邪神殺す前に会ったことがあるんだ」

「よくも、我が夫を殺してくれたものだなぁ」

「まぁね」

「我は、夫を殺されたことを遺憾に思う」

 ザバァッ!

「さぁっあたしを殺してくれ! 」

「ああ……それだったら、僕と同じはずだよ…………」

「同じ? ど言うことだ? 」

「僕は、祥観を自分のものにするために、守っている。祥観を酷い目に遭わせるなら、殺しても引き離す。なのに、どうして、僕を殺さなかったんだ? 」

「うん………………」

 セドナは、上げた腕を下ろした。

 ここまで、面倒なことになってはドツボにはまりかねない。

「悪い……先へ行ってくれ……我は、考えたくない………………」

 ズボォォォォォォーーーーーーーーーーンッ……………………………………………………

 セドナは、海水と共に菅田を消した。

 

 三十分後。

 東方大蛇線がやって来た。

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーー………………

「着いたね。そう言えば、祥観は、上駅の由来が解ったかなぁ」

「なんとなくね。上駅の『上』は、当て字だったよ。セルキーさんの語尾だった」

「さすが、祥観! 君の頭のいいところ好きだよ!」

「うん!」

「ちょっと、あたしを忘れないで!」

 シュゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーー……ドンッ!




 

 


 




 


 


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