2、読者モデルコンテスト、出るの? 出ないの?
スゥ……。
彼女の胸が膨らむ。
たくさんの空気が肺に送り込まれている。
「……(来るか?)」
マシンガントーク。
「今度の読モ撮影会、アタシら以外に11組ほど参加するんすけど、その中に、慶葉付属の奴らがいるんすよ。アイツらスッゲむかつくんすよ。メンバの一人に、人気歌手で有名な“香奈多紗枝”の妹がいるんすけど、もう既に“アタシらが一番”みたいなこと言ってて、ウチらのファンの子が青葉の人たちも可愛いよって言ったら『はぁ?青葉ぁ、ドコの田舎のガッコ?』とか言ったんすよ。あったま来ません? 蓮華さん」
「え? (蓮華さん……?)」
ちょっぴり違和感。
機関銃のようにまくし立てる彼女は何ゆえ体育会系の言葉遣いなんだろう?
慶葉付属の子達にその可愛らしい手の平でビンタとか放ちそう。
「(歌手の香奈多紗枝ねぇ……)」
私は彼女の姿や歌声を記憶の中から探しだす。
すると、先日、お父さんが観ていたテレビの歌番組を思い出した。
生意気な顔をして、司会者の男性を揶揄う彼女の姿が脳裏に浮かび上がる。
隣にいたら嫌なタイプだな~と思う。
「(まぁほっぺたを叩くくらいでいいなら、やるけどさ。私も)」
心の中でそう呟く。
モシャ、モシャ。
モシャモシャ、モシャモシャ、モシャ。
スパン!
「ぶ」
米粒が二つ、口から飛び出した。
「もう蓮華、さっきから食ってばっかりじゃんアンタ」
岬に頭をはたかれたようだ。
口の中の米粒が残らず飛び出しそうになったので、私は慌てて左手で押さえた。
や、岬、
流石に私でも、口に入れたものを外に放り出したくはない。
ジロリと睨む。
「はぁ~」
しかし、当の岬は全く動じずに、ため息をつきやがる。
え?
なんかムカつくんすけど。
「はぁ、あのね蓮華、あんた女の子でしょ? もっと上品に食べなさいよ。詰め込むだけ詰め込んであんたのほっぺた、まるでペコちゃん人形みたいよ」
確かに、私の両の頬には、これでもかと言わんばかりにお弁当のおにぎりとミートボールとレタスとブロッコリーと詰め込まれ、パンパンに膨れ上がっていた。
もう一寸の隙間も無いほどに膨れた頬には、だがしかし、それを咀嚼し飲み込む前になお、新たなおにぎりが運ばれてゆく。
私の右手が勝手にそう動くのだろう。
「ダメよ、じょう……じゃない遠野さん。この子いつもお弁当食べるときこうだもん。まるでリスよ。リスって向日葵の種をほっぺに詰め込むだけ詰め込んで巣穴に帰るじゃない? きっと早く食べないとお弁当盗られるとでも思ってんのよ」
私と相席で共に箸をつついていた結衣が笑う。
「喋ることは無理でも聞くことは出来るから、コミュニケーションは可能よ。トライしてみれば」
「……」
おうおう、言うじゃねぇか結衣。
「……」
でも私の口の中は一杯で、言葉が出せない。
私は、ニコッ、と満面の笑みを浮かべながら箸を持ってない方の手で親指を突き出しオッケーのポーズをした。
「そ。わかったわ。で、どうなの? 出るの? 出ないの?」
岬が呆れた顔で結論を促す。
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「蓮華のステータス」
1,命の残り時間 :キッカリ1年と1か月間
2,主人公へ向けた想い :トラウマ・レベル
3,希望 :★☆☆☆☆
4,美貌 :★★★★★
5,今好きなモノ :お弁当
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