首輪
微風 豪志
首輪
息が詰まりそうな静寂の中で縄の首輪を撫でながら明かりもつけずにただただボゥとしていた。
足を一歩踏み込めばもう何も悩まなくて済むその為ならばと、準備が先程終わり。
今、最後の仕上げになるところだ。
ここで恐怖を感じれるなら、心がまだ生きていくことを望んでいるのではないかと期待をしてみる。
台から降りて、自分の胸に手を当てて、生きていたいかどうかを聞いてみる。
しかし生憎と結果は予想通りであった。
できることならば、立派に生きたかった。
立派に生きるとは別に誰かを助け、人を愛し皆々に好かれるように生きると言うことではなく、一人二人に見送られながらゆっくりと目を瞑る。
ただそれだけで良いと思う。
しかし私はただそれだけのことが難しく、こうする他なくなってしまった。
しばらくしてまた私は台から降り煙草を吹かした、「体には気をつけねばならない」この理から外れた私はどうにもいい気持ちである。
私はいよいよ人で無くなってしまうのだ。
となれば、最後にこの部屋の中でだけ、ただ一人王様になれたのである。
煙草を吹かし終わりまた首輪をはめ、台に登る。
嗚呼、愛しきかな。
現世の呪縛から私を解き放つ首輪。
私は静かに目を瞑ると、台を蹴り飛ばした。
首がキュウゥゥゥゥ、と閉まる。
苦しい。
____あぁ、別の死に方を選べばよかった。
全く、後悔ばかりの人生である。
首輪 微風 豪志 @tokumei_kibou_tokumei
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