竜姫の冒険 ~前世はVRゲームのテイムモンスター?~
京高
第1章 ドラゴンの集落
第1話 誕生
ちーとなドラゴン少女はじめました。
過去作の 『テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記』 に登場するエッ君、の記憶を持つ少女が主人公です。
ですが、あらすじにも書いた通り読んでなくても問題なし!気楽に覗いてみてください。
本日は三話連続投稿予定。
以降はストックがなくなるまで朝・夕の一日に二回投稿していく予定です。
執筆モチベーションを上げるためにも、感想や評価もぜひぜひお願いいたしますです!(割とマジ)
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
最初に感じたのは「狭い」だった。次が「暗い」ね。
「……お?おおお!!
責任者出てこい!と思った途端、野太くて重低音な声が聞こえてくる。なんだかくぐもったように聞こえるのは、当人の声質以上にボクが閉じられた狭い空間にいるからなのかしらん。
というか本当に狭い!暗い!
両膝を抱きかかえて身動きが取れないとかどんだけよ!?
「むむむ!罅が大きくなっている!もう少しだぞ!」
むむむ!じゃないよ。罅が大きくなったからどうなのか何がもう少しなのだか知らないが、そんなことを叫んでいる暇があるなら助けろと言いたい。
うなー!段々イライラしてきた!どうしてこんな訳も分からない状態になっているのか!
苛立つ感情に任せて体に力を入れると、カチリと何かがはまったような気がした。
「おお!おおお!いけるぞ!そのまま――」
「う・る・さーい!!」
四肢に力を込めて伸びあがりボクを閉じ込める狭苦しい空間を破壊、更に心配しているようでいてその実他人事感満載な応援の言葉をぶった切る。
はあ、ふうと深呼吸をして息を整えてから前を向いて見れば、あらびっくり。パラパラと何かが降ってくる中でこちらを見ていたのは大きなドラゴンだった。
どことなくブラックドラゴンのおじさんに似ているね。特に間の抜けた表情なんてそっくりだわ。
そういえば随分と長く会っていない気がする。元気にしている……、のだろうなあ。お腹を上にして寝転ぶだらけている姿しか思い浮かばないよ。
「な、な、なな、なななななぜ我らの卵から人間があっ!?」
懐かしい顔を思い出して苦笑していると、目の前のドラゴンが騒ぎ出す。正直かなりうるさいです。
「おのれ怪しい人間め!どうやってここに潜り込んだ?いや、そんなことよりも我らが幼子をどこにやった!?」
しかも意味不明なことを大声でまくしたててくるし。色々と状況を説明して欲しいのはこちらの方なんですけど?
「ぐぬぬ!傲岸不遜なその態度、生意気な!成敗してくれるわ!」
ちょっと、ちょっと!?いきなり攻撃とか短絡的すぎない!?……あ、ブラックドラゴンのおじさんと最初に会った時も似たようなものだったわ。もしかしてドラゴンって結構おバカ?同じ種族の者としては居た堪れない気分になってくるよ……。
などと考えている間にもどんどんと鉤爪は迫ってくる。だけどさ。
「ほい、っとね」
ぴょんと軽くサイドステップ。それだけで凶悪な攻撃は空を切ることに。
ところがぎっちょんドラゴンの方は避けられるとは思ってもいなかったようで「なんだとっ!?」と本気で驚いていた。いやいや、危ないのだからリアクションがあるのは当然でしょうが。どれだけ相手のことを見下しているのよ。それとも自分のことをよっぽど過大に評価しているのかな。
どちらにしても碌なものじゃないね。
「ないわー」
「うぬぬう!!」
思わず言葉になって漏れてしまった素直な気持ちに、ドラゴンの顔が真っ赤に染まっていく。おおー。緑基調の体色だから反対色の赤がよく分かるねえ。
というか、いくら強かろうとももうちょっと感情をコントロールできるようにならないと、二流にも届かない三流のままだと思うよ。お母さんたちなら何もさせずに
まあ、ボクなら正面から叩き潰すことだってできるんだけど!
「上には上がいるってことを教えてあげるよ!」
「ぬがっ!?」
さっぱり意味不明なこの状況にはボクもいい加減腹が立っていたのだ。悪いけど八つ当たり兼ストレス解消をさせてもらう。
「まずは、【裂空衝!】」
「ごあっ!?」
右足を素早く大きく振り上げて衝撃波を放つ。的が大きいと当たり易くていいね。
もちろんこれで終わりじゃない。そのまま右足で地面を踏みしめて、ジャンプ!
「お次はこちら。【流星脚】!」
くるりと上空で一回転して急加速!脳天、はさすがに危ないので左肩付近にズガン!と強烈な蹴りの一撃をお見舞いする。
「ぐ、ぐがあああああ!?……ば、馬鹿な!?堅牢な我が竜鱗をものともしないだと!?」
ふふん!ボクの流星脚は鎧などの防具を浸透してダメージを与える特殊な闘技なのだ。絶対の信頼を寄せていた鱗を無視したダメージにドラゴンの頭部が地面間際にまで下がってくる。チャンスだ。
「これでお終い!【三連撃】!」
「ま、まへっ!?ぶっ!?しっ!?」
一足で目の前にまで踏み込むと、その下顎に左脚で回し蹴り、くるりと回転して尻尾での打撃、そして右脚での後ろ回し蹴りを連続で叩き込む。
「ご……、が……」
連続で頭を揺さぶったからね。いかに頑丈さがウリのドラゴンでも、立っていられないほどの眩暈に苛まれているはずだよ。その予想通り、二歩三歩とたたらを踏むように動いた後、ドスンと地面に突っ伏したのだった。
「ふふん!チビッ子だと思ってボクを侮るからだよ!……あれ?」
そこでふといつもとの違いに気が付く。浮遊している訳でもないのに、今日はやけに視線が高いような?
「んにゃっ!?」
視線を下げていくと足元が、見えない!?
どどーん!と迫り出したお胸様によって視界が遮られてしまっていた。
「えぇー……。ちょ、ちょっと待って。これお母さんどころかミル姉、ううん、ネイ姉と同じくらいはありそうなんだけど?」
思わず両手で鷲掴みにしてみれば、もにゅんと柔らかな感触が。
「って、手えええええええええええええええええ!?!?」
いやいやいやいや、待って待って待って待って!?
理解が追い付かない。ボクはエッグ状態なドラゴンパピーで、ツルスベな卵ボディから足と尻尾、それに羽だけが飛び出しているという姿だったはず。
だけど今の身体はどう見てもお母さんたち人間種にそっくりだった。
「ああ、なるほど。だからあのドラゴンはボクのことを人間って言っていたのかあ」
思わぬところで明らかになった衝撃の事実というやつだわね。
「あっ!そうだ、ステータス!?」
口にしたと同時に、目の前の中空に板のようなものが浮かび上がる。良かった。どうやらこちらは記憶通りに作用するみたいだ。
……とはいえ違う面も多いね。技能や闘技は表示されているけれど、レベルもなければ魔力や敏捷といった細やかな数値もなくなっている。アイテムボックス的な機能が残っているのはありがたいけれど、かなりの制限が課せられているようだ。
「おっと、種族と職業が書いてあるね」
ここは同じだったもよう。で、種族は『ドラゴニュート』かあ。いわゆるドラゴン人間だわね。納得。
ステータスに表示された姿絵の通りならば、ボクの場合は人間の割合がかなり多いようだ。背面の尻尾と羽――小さいのが生えてました――がなければ人間の街でもバレることなく暮らしていけそう。鱗なんて額と胸元に一枚ずつあるだけだもの。簡単に隠せてしまうだろう。
そして職業の方は、『覚醒龍姫』!?
……なんだろう、お母さんが言っていた中二病?なるものと似た感じがするよ。しかも意味がさっぱり分からないし。
そのインパクトの大きさに、直上にあった名前欄には気が付かないままのボクなのでした。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
〇主人公ちゃんステータス
名前 : ???
種族 : ドラゴニュート
職業 : 覚醒龍姫
技能 : 〔
〔
〔ブレス〕
〔飛翔〕
〔完全人化〕
〔完全竜化〕
闘技 : 【三連撃】、【裂空衝】、【流星脚】
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