第2話 方城未利の物語



 方城未利。


 その人物は、運命によって死が定められた少女だった。


 幼い頃から周囲の人間を破滅させ、絶えず不幸を呼び込んできた。


 だから少女は、


 自我を殺し、他者を思い、誰かを模倣しながら、その場の状況に合わせて生きていく。


 それは少女なりの優しさであり、反抗であり、生存戦略であった。






 方城未利は、その日も運命によって騒乱へと巻き込まれる。


 通っている小学校に登校した彼女は、異世界に召喚された。


 異世界に地には、魔法があり、見たことのない生物がたくさんいる。


 しかし、それらの事実は少女の心を湧きたたせない。


 ただ、生きるために少女は奔走する。





 方城未利は、魔法の技術を身に着け、自分の力を見せつけ、必要とされるためにあがいた。


 誰かの力になり、自分の力とするために、常に己の立ち位置を考えながら。


 




 ある時、一人の少年と出会った。


 その少年は、方城未利に手を差し伸べ、助けると言った。


 少年は強く、思いやりもあった。


 だが、方城未利はその申し出を断った。


 自分一人で生きていく事を選んだ。






 ある時、困っていた動物を助けた。


 その動物は、元の世界にいた猫のような何かだった。


 猫は方城未利になつき、無償の愛を与えた。


 しかし、少女はその猫を頼れる誰かに預けて、猫の前から立ち去った。






 またある時、子供を亡くしたばかりの夫婦がいた。


 悲しみに暮れる彼らの慰めになればと、方城未利は彼らの話し相手をした。


 夫婦は喜び、自分達の子供にならないかと言った。


 しかし、少女はその申し出を断り、彼らの前から姿を消した。





 そして最後に、世界を救う為、新しい技術をほしがる者がいた。


 方城未利が召喚された世界は、滅びの危機に瀕しており、何らかの対処が必要だったからだ。


 少女は彼らに協力し、新しい技術を開発させた。


 恩を覚えた彼らは、方城未利にその世界で暮らしていけるだけの将来性を約束した。


 しかし、少女は彼らの前からもいなくなった。






 方城未利は、全てに背を向けて一人で歩く。


 歩いてきた道の上には、たくさんの屍があった。


 これから歩く先でも屍が作られるだろう。


 しかし、進んで作る必要などない。


 少女はその屍になるだろう者達をよけて歩くようになった。




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