第4話

深夜のとある事件からチャンスという1匹のワンちゃんが、彼の生きる希望となった。


命を救われたものの、辛く、虚しい日々は変わりない。冷たく悴んだ手をさすりながら、我慢に我慢を重ねた日々の中でいつしか彼は思った。


「この状況を本にしよう」


そうすれば何かが報われるような気がしていた。辛い日々が報われて欲しいと願う度、そう思わなければやっていけなかったのだ。


そんな中、病院への入院が決まった。閉鎖病棟への入院である。


入院初日。彼は朝食の途中で吐いてしまった。そんな彼を見かねてスタッフは言った。


「漢方薬とかさ。増やしてもらったら?何度も吐くの見るのも、せつねぇからよ」


入院した病院は良心的な人が多く、心強いスタッフの方が沢山いた。比較的精神病棟の中では良い病院だった。


しかし、また事件。いや災害が起こる。


個室のベットにて横になりくつろいでいる時だった。


…ガタガタガタ…グワんグワんグワん…と揺れを感じた。


揺れはすぐ強くなった。


ガタンガタンガタンガタンガッタンガッタン!!!


机の上に置いてある本などがバサバサと落ちていった。


「おいおい!まじか!」


彼は咄嗟にそう叫んでいた。


そして、食事をするホールへ走っていった。揺れはそこで治った。


2011年3月11日午後14時46分の出来事だった。



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