第2話
「楽しかったことはすぐ過ぎた」
それが彼の小学校の卒業文集のタイトルだった。楽しいことは永遠に続いて欲しいこと、そしてこれからの生活の不安について書かれていた。
そして、その不安は的中し、中学生時代はいじめにあい。鼻のてっぺんあたりにホクロがあったことから「大仏」と呼ばれていた。大仏のホクロのようなものは鼻のてっぺんあたりにはないとは思いつつ。いつもそのように呼ばれていた。
物心ついた時から、彼は家の中で惚けるようになり、学校にも行かなくなっていた。いわゆる不登校児だ。その様子を家族が黙っているはずもない。家族はなんとかまともになってもらいたいと、厳しい叱責を続ける…が、それも逆効果に終わり。
彼は孤独と寂しさを募らせていった。
そして、ある時その現象は起こった。
「うああああああああ」
彼は叫んでいた。一秒ごとに何が起こるかわからない不気味さを感じていた。全てが俺の命を狙っている。全てが俺の存在を消し去ろうとしている。滑稽な妄想だが、確かな実感を伴った妄想だった。
彼は走った。どこかに救いを求め彷徨った。そして、その先には警察官がひとり立っていた。そして彼はパトカーに乗せられ、元いた家に戻されていった。
ある時気がつくと、彼は父親の車に乗っていた。そして、立派な木造住宅の前に車を止めさせた。
一緒に家の前に立って父は言った「願えばなんでも叶うからな」なぜそう言ったのかは覚えていない。ただそう言っていた。
それだけは覚えている。
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