第9話 飲食フェアの幕開け、三大チェーンとの初対決
「おはようございます!今日は全力でやりましょう!」
飲食フェア当日、朝の陽ざしが福岡の会場を照らし始める中、優はやりうどんのブース前でスタッフたちに気合を入れていた。福岡市内の有名な会場はすでに賑わいを見せており、三大チェーンを含む大手飲食店から個人経営の店までが一堂に会している。
やりうどんのブースには、試行錯誤の末に完成した「新・白カレーうどん」が堂々と掲げられていた。真っ白なマッシュポテトとスパイスの効いたカレー、そして福岡らしいトッピング――明太子や高菜、博多ポークのローストが一皿を彩っている。
「絶対に成功させる……!」優は拳を握りしめ、これまでの努力を思い出して気合を入れた。
三大チェーンの圧倒的な存在感
「やっぱり、あいつらのブースはすごいな……」
隣のブースをちらりと見やると、ウエスト、資さんうどん、牧のうどんのブースが目に飛び込む。どのブースも長蛇の列を作り、大量のスタッフが手際よく商品を提供している。鮮やかな看板や、大胆に掲げられた「福岡うどんNo.1」の文字が目立ち、どの店舗も自信満々だ。
特に牧のうどんのブースでは、ふわふわの麺と熱々のスープの「継ぎ足し文化」を強調したデモンストレーションを行っており、観客たちが歓声を上げていた。
「……やっぱり、簡単には勝てないかも。」優は少しだけ不安を感じたが、すぐに首を振って気持ちを切り替えた。
「負けるわけにはいかない!やりうどんらしさで勝負するんだから!」
フェアが始まってすぐ、やりうどんのブースにもちらほらと客が訪れ始めた。最初にやってきたのは観光客らしい中年夫婦だった。
「こんにちは!こちらが新メニューの『白カレーうどん』です。福岡らしい明太子と高菜をトッピングしていて、スリランカカレーのスパイスを使った特別な一品なんです!」優が笑顔で説明すると、夫婦は興味深そうに頷きながら注文した。
「へぇ、福岡のうどんって聞いてたけど、こういうカレーうどんもあるんだね。」
「楽しみだわ!」
調理された白カレーうどんが二人の前に置かれると、夫婦はさっそく箸を取った。一口食べた瞬間、奥さんが目を輝かせる。
「美味しい……!カレーのスパイスがすごく効いてるけど、マッシュポテトとココナッツミルクのまろやかさで全然きつくない!」
「これは新しいね。福岡らしいトッピングもあって、旅行の思い出にぴったりだな。」
その言葉に、優の胸がじんわりと温かくなった。
「ありがとうございます!福岡旅行の思い出になれたら嬉しいです!」
その後も、やりうどんブースには観光客や地元民が続々と訪れ始めた。SNSを見てやってきた若い女性グループや、子ども連れの家族、さらには三大チェーンの列が長すぎて避けてきた人々も混じっている。
「これ、インスタ映えするね!」
「味も見た目も今までのうどんと違う!」
「カレーとうどんがこんなに合うなんて思わなかった!」
客たちからの好評の声が次々と聞こえてくる。優はそれを聞きながら、少しずつ自信を取り戻していった。
一方、ブースの後ろで腕を組んで立っている嶋村は、黙って周囲を観察していた。特に三大チェーンの動きには目を光らせている。
「さすがに強敵だな……。だが、やりうどんも悪くない。」
その独り言を聞いたスタッフのさつきが、恐る恐る尋ねた。
「嶋村さん、私たち……勝てそうですか?」
嶋村は少しだけ笑い、言葉を選ぶように答えた。
「勝ち負けなんてものは、客が決めることだ。だが、今のやりうどんなら十分に戦えてる。少なくとも、三大チェーンの二番煎じにはなっていないからな。」
午後になると、三大チェーンのブースでもやりうどんの名前が囁かれ始めていた。
「やりうどんが新しい白カレーうどんを出してるらしいぞ。」
「スリランカカレー風味とか、結構攻めたメニューだな。」
「でも、うちの方が強いだろう。知名度が違うからな。」
そんな中、牧のうどんの責任者らしき男性がやりうどんブースをちらりと見て、低く呟いた。
「やりうどん……久々に名前を聞いたが、なかなか頑張ってるようだな。」
夕方、会場全体が活気に満ちた頃、やりうどんのブースは予想以上の人で賑わっていた。優は休む暇もなく調理を続けながら、ふと嶋村の顔を見る。
「嶋村さん、私たち……やりうどん、ここまでやれてますよね?」
嶋村は軽く頷きながら、少しだけ意地悪そうに笑った。
「お前が思ったよりはな。だが、本当の勝負はこれからだ。」
「これから……?」
「三大チェーンもお前たちを認識し始めた。次に何を仕掛けるか、それが大事だ。」
優はその言葉に少し驚いたが、すぐに笑みを浮かべた。
「じゃあ、もっと驚かせてみせます!私たちの白カレーうどんで!」
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