【一話完結】無茶ぶり探偵~事件を解決するのは私では、ありません。あなたです!~その三
久坂裕介
第一話
少し暑くなってきた、七月上旬。僕、
そうして一年一組の教室に戻ってきた僕は、『ほっ』としていた。四時間目の苦手な体育の授業が、ようやく終わったからだ。僕は数学は
だから今日の授業のバスケットボールではパスはもらったが結局、一ゴールも決めることができなかった。女子は全員で、ダンスの授業をしていたようだ。そしてそれは、楽しかったようだ。体育館から教室に
「今日のダンスの授業、楽しかったねー」
「うん。
なるほど、そうだったのか。でも
でも教室に入った
「何だ、ありゃあ?」
「
なので僕も、黒板を見てみた。すると黒板には白いチョークで、こう書かれていた。
問題 五月と五月の関係は何だ?
僕は少し、考えてみた。でも、分からなかった。するといつの間にか僕の隣に、クラス委員長の
「うーん、これは事件ですねえ……」
僕は、考えた。いやいや、これは事件って言うほどのモノじゃないと思うんだけど。そして、
僕の予感は、
「この事件、私の
あー、やっぱり……。そして僕は、
「この事件を解決を解決するのは、あなたです! 咲子さん!」
当然、咲子さんは
「え? な、何で私なの?!」
するとみのりさんは、説明した。
「黒板に書いてある言葉は、日本語です。なので国語が得意な咲子さんなら、この問題の答えが分かるはずです!」
あー、なるほどね。今日は、そうきましたか。推理じゃない、ただの
「え? えーと、私、こんな難しい問題は分かんないよ!」
でもみのりさんは、空気を読まなかった。
「あなたなら、きっとできるはずです! がんばって!」
いやいや。みのりさんは
「う、うーん……。五月を、別の読み方にすればいいのかな?」
それからもしばらくの間、咲子さんは必死に考えたようだ。でも分からなかったようだ。
「えーん、分かんないよー、みのりちゃん! ごめーん!」
するとみのりさんは、
「うーん。国語が得意な咲子さんでも、分かりませんか……」
その時、僕はふと
でもその時、僕には分かってしまった。黒板に書かれている、問題の答えが。そして、誰がなぜ書いたのか。それが分かってから、僕は
●
それから少し考えて僕は、みのりさんに声をかけた。
「ちょっと、みのりさん。
するとみのりさんは、「はい?
「僕、あの問題の答えが分かっちゃったんだ」
それを聞いたみのりさんは
「え? それは本当ですか、海太郎君?!」
僕はあわてて、みのりさんに注意をした。
「しーっ。これはとてもデリケートな問題だから、小さな声で話して」
するとみのりさんは、
「うーん、なるほど。うん、そうですね。きっと、そうですね」
そして僕は、
「え? それは本当ですか、海太郎君?!」
僕は再び、注意した。
「しーっ。みのりさん、小さな声で」
するとみのりさんは、あわてて頷いた。僕は説明を、続けた。僕はさっき、愛依さんと皐月さんを見た。二人は寄り添って、どちらも不安そうな表情をしていた。おそらく、二人には分かったんだろう。
黒板に書かれている問題は、自分たちのことだと。そしてその答えは、恋人同士だと。それがバレると、非常にマズイ。僕たちは、まだ中学一年生だ。女の子同士の恋人なんていうことがバレたら、どうなるだろう。
おそらくその話は、クラス中に広まるだろう。クラスの中には
そうして愛依さんと皐月さんはおそらく、このクラスにはいられなくなるだろう。それはみのりさんが
「うーん、なるほど。確かに、デリケートな問題ですね……」
そして僕は、説明を続けた。この問題を黒板に書いた犯人は、おそらくこのクラスの男子生徒の誰かだろう。彼はおそらく、愛依さんか皐月さんのどちらかが好きなんだ。でも二人が恋人同士だということに、気づいた。だから二人を
するとみのりさんは、聞いてきた。
「でもそうなると犯人は、男子生徒とは
それを聞いた僕は、首を横に振った。それはおそらく、ありえないと。三時間目までは黒板に、あんなことは書いていなかった。つまり書いたのは四時間目の、体育の授業中だろう。
今日の女子の体育の授業は、全員でダンスをしていた。そして女子の会話から女子は全員、授業を最初から最後まで受けていたようだから。それに比べて僕たち男子の授業は、バスケットボールだった。バスケットボールはもちろん、五人対五人だ。つまりその合計十人以外は、見学をする。
だったら途中で授業を
「なるほど……」
そして
「ど、どうするの、みのりさん?」
するとみのりさんは、振り返らずに答えた。
「私は、そういう人を
「え?」
そうしてみのりさんは黒板の前に行き、書かれていた問題を黒板消しで消した。それから正面を向いて
「皆さんに、聞いてもらいたいことがあります」
するとクラスの皆は、何だろうという表情でみのりさんに注目した。そしてみのりさんは再び、静かに話し出した。
「愛は、
それを聞いたクラスの皆は、静まり返った。でも次の瞬間、クラス中が
「何となく、分かったような気がするぜ! みのりちゃん!」
「本当!
そしてクラス中、しばらく沸いていた。僕はそっと、愛依さんと皐さんを見てみた。すると二人とも、安心した表情になっていた。うん、そうだ。もし二人が恋人同士であることがバレても、きっとうまく行くだろう。
そして今度は、みのりさんを見つめた。僕は、思った。きっとみのりさんの心は、雪のように白く
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