第187話

トキノリは予定通り前回利用したお店までやってきて入店する。

「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」

「はい。席は空いていますか?」

「ただいま、お店の方が混んでおりまして・・・。相席で良ければご案内できますがいかがしますか?」

「私は構いませんよ」

「では、お席の方にご案内させていただきます」

店員に案内されて着席する。

「今、メニューをお持ちしますね」

店員は水とおしぼりにメニューをすぐ持って戻ってくる。

「お待たせしました。ご注文が決まりましたらお呼びください」

店員は忙しいのだろう。

それだけ言うと別の席に向かった。

トキノリはメニューを開き何を注文するか吟味する。

メニューのトップにはセール中とでかでかと書かれた鰻重が乗っていた。

そういえば地球の日本では今頃は夏だったかと思いだす。

少しお高めだが夏の風物詩でもある鰻重を頼むのも悪くないだろう。

トキノリは店員を呼ぶとすぐにやってきた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「鰻重のセットをお願いします」

「鰻重のセットですね。すぐお持ちします」

しばらく待っているとお重に乗せられた鰻重が到着する。

食欲のそそる匂いに期待が大きくなる。

まずはセットでついてきたあさりの味噌汁で喉を潤す。

こちらも出汁が良く出ておりとても美味しかった。

箸を鰻に差し込めばすっと身がほぐれる。

そのまま口に運べば油と旨味が口いっぱいに広がる。

トキノリはかきこむように鰻重を食べ進める。

鰻重はあっという間になくなってしまった。

「ふぅ・・・。今回も当たりだったな」

値段は相応にお高いが十分満足したトキノリは支払いを済ませて店を出た。

「さてと・・・。お腹も満たせたし船に戻るかな」

トキノリは上機嫌で雪風に戻る。

物資の積み込み状況を確認すると必要な物は全て積みこまれていた。

出港まではまだ時間があるがハルプンテが最優先で仕事をしてくれたようだ。

前線を支える補給拠点を任されているだけありやはり優秀なのだろう。

船員達が戻ってくるまではまだ時間がある。

トキノリは自室に戻り暇つぶしとして読書をすることにした。

最近は忙しくて時間をあまり取れていなかったのでこうしてゆったりと本を読めるというのはありがたい。

読書をしているとあっという間に時間は過ぎていき夕食の時間となっていた。

食堂に向かい残っている船員達と共に軍用レーションを温めて食べる。

周囲を見ればしかめっ面をしている船員達がいた。

やはり美味しくないのだろう。

とはいえ、作戦中は貴重な食料だ。

自分だけ違うものを食べるのは士気を下げる要因になりかねない。

トキノリは船に乗っている時は出来るだけ同じ物を食べるようにしていた。

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