第154話

本日もトキノリは書類の山と格闘していた。

恐ろしいことに処理するよりも運ばれてくる書類の方が多い。

これはトキノリが慣れていないこともあるが元侯爵であるモーリスがさぼっていた結果でもあった。

各部署の人員が入れ替わり問題がある個所を次々に発見しトキノリの決裁を必要としていたのだ。

「トキノリ殿。こういっては何だが休憩した方がよいのじゃ」

「と言っても溜まる方が早くて少しでも終わらせないと・・・」

「いやいや。溜まるのはもう諦めるのじゃ。疲れた頭で処理しても効率が悪いだけなのじゃ」

「なるほど・・・。一理、ありますね」

トキノリは今見ている書類を処理してソファーに移動する。

トキノリがソファーに移動すると同時に湯気の出たコーヒーが差し出される。

出してくれたのはミリスだった。

「ありがとうございます」

トキノリは備え付けられている角砂糖を3個ほどコーヒーに入れる。

基本的にブラックの方が好きなのだが今は少しでも糖分が必要だ。

「それにしてもモーリス侯爵は何をしていたんでしょうね」

「不正だけは上手なようじゃが、統治者としては失格なのじゃ」

今、こうして苦労している最大の理由は元モーリス侯爵とその配下達のしでかしたことの尻拭いだった。

「んっ・・・?通信が来てますね」

トキノリはそう言って端末を操作して内容をチェックする。

「誰からなのじゃ?」

「雪風に乗ってるサーシャさんからですね」

内容は雪風を旗艦とする哨戒艦隊が宇宙海賊と接敵したとのことだった。

軽く撃ち合いになったが宇宙海賊は勝てないとみると逃亡したようだ。

「宇宙海賊と遭遇したようです」

「なるほどなのじゃ。父上が配備した艦隊の方でも確認してるのじゃ」

「問題は遭遇した場所ですね」

「どこなのじゃ?」

「ここから割と近いですね」

「海賊航路に引っ込んでおるぶんには問題ないのじゃがの」

「そうですね。何かしら対策が必要です」

「場合によっては傭兵ギルドを使うしかないかもしれないのじゃ」

「傭兵ギルドをですか?」

「戦力が足りないなら金で雇うしかないのじゃ」

「お金がかかりますね」

「そうじゃの。じゃが、全額は出さなくても大丈夫なのじゃ」

「というと?」

「書類をきちんと提出すれば帝国から補助金が出るのじゃ」

「休憩が終わったら教えてもらってもいいですか?」

「もちろんなのじゃ」

トキノリは休憩後、アナスタシアに教えてもらいながら傭兵を雇うために書類を整えた。

3時間ほどかかったが、これで傭兵達を戦力として組み込むことが可能となった。

書類の山を見なかったことにしてそのまま交渉をする為に傭兵ギルドを目指した。

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