第132話

「皆さん。私も行きます」

そう言ってトキノリの救出に向かう雪風のクルーにマリーは申し出た。

「いえ。マリー様は雪風に残ってください」

「私だけ安全な場所にいるわけには・・・」

「雪風を守るのも大事な役目ですよ」

雪風は高価な船だ。

その価値を知れば接収を狙ってくるかもしれない。

システムをロックしているとはいえ、無人にするのは危険だった。

「この役目はマリー様にしかできません。我々の戻る場所を守ってください」

マリーも本当はわかっていた。

自分がついていっても足手まといになるだけだ。

「わかりました。皆さん必ず無事に戻ってきてくださいね」



その頃、トキノリはフロイタル星系の監獄にいた。

腕を縛られ天上から体を吊るしあげられている。

「正直に情報を吐くならよし。そうでなければ拷問する」

「そもそも何で捕まったかわかってないんですけど・・・」

「ウロボロスの一員だというのはわかっている」

どうやら星系軍での一件で勘違いされているようだ。

サーシャは他言しないように言ったはずだが情報が漏れたのだろう。

拷問を受けたいわけではないが何か有用な情報が聞けるかもしれない。

「そんなに隠したい事があるんですか?」

「質問しているのはこっちだ」

そう言って尋問している男は鞭を振り下ろす。

鞭はトキノリの体に当たりミミズ腫れを引き起こす。

「喋りたくないというのならそれもいいだろう。喋りたくなるようにしてやるだけだ」

そう言って何度も何度も鞭を振るってくる。

トキノリとしては喋れる情報もないのでただ耐えることしかできなかった。

拷問は数時間にもわたり続きトキノリの体は傷だらけだ。

「しぶとい奴め・・・」

そう言って尋問していた男は部屋を出て行った。



「トキノリ様。大丈夫ですか?」

心配するような声が天上の方から聞こえる。

視線を向ければ通気口のようなものがあった。

「自分は大丈夫です」

「もうしばらく耐えてください。必ずお助けしますから」

そう言ったのを最後に声は聞こえなくなった。

姿は見えなくても相手が誰であるかはわかった。

声の正体は不正を調べているサーシャだ。

トキノリが捕まったのを知って様子を見に来てくれたのだろう。

自分が拷問を受けたのは全くの無駄ではない。

このフロイタル星系を治めるモーリス侯爵には隠したい何かが存在するのだ。

それが何かはわからないが優秀なサーシャなら必ず突き止めてくれるだろう。

自分にできることはサーシャを信じて耐えることだけだ。

後、心配なのはマリーや雪風のクルー達だ。

捕まったのを知ったら何かを引き起こしそうだ。

元々優秀な人員が揃っているが無茶なことをしなければいいのだが・・・。

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