第129話

フロイタル星系の軌道ステーションに戻ってきたトキノリ達は指定された業者に鉱石を引き渡し休暇を取ることにした。

「今回は、自分が船に残るので皆さんはしっかり休んでくださいね」

「上司が仕事をしているのに休むというのは・・・」

「いえ、皆さん、働きすぎですよ。艦長命令です」

「わかりました。ですが、何かあった際は遠慮なく呼び出してください」

そう言って雪風のクルー達は休暇を取る為に雪風を下船していった。

「さてと・・・。することもないし本でも読もうかな」

トキノリは読みかけの本をブリッジに持ち込み読書を開始した。

読書を開始してしばらくすると来客を告げる通知がやってくる。

「はい?」

モニターを確認すれば何やら抱えているマリーの姿があった。

「あっ。トキノリさん。食事をテイクアウトしてきたので一緒にどうですか?」

「わざわざ悪いね。今、行くから」

トキノリは本に栞を挟んでからマリーを迎えに行った。

「へぇ。雪風の中ってこうなってるんですね」

「マリーを雪風の中に入れるのははじめてだっけ?」

「そうですね。はじめてです」

「そっか。食堂でいいかな?」

「はい」

トキノリとマリーは食堂でマリーの買ってきた料理を広げていた。

「おっ。どれも美味しそう」

「人気のお店のやつを揃えてみました」

「手に入れるの大変だったんじゃない?」

「いえ。少し並んだだけですから」

「そっか・・・。ありがたくいただくね」

トキノリとマリーはそれぞれ気になった物を食べてみる。

「おっ。これ美味しい」

「トキノリさん。こっちのも美味しいですよ」

そう言ってマリーはスプーンを差し出してくる。

「えっと・・・」

トキノリは一瞬、中途する。

「食べないんですか?」

マリーはそう言ってキラキラした目で見てくる。

トキノリは覚悟を決めてスプーンに口をつけた。

「おっ。本当だ。美味しい」

「もう1口食べてみますか?」

どうやらマリーは間接キスになっていることに気がついていないようだ。

「マリーの分がなくなっちゃうよ?」

「いえ。気にしないでください」

そう言ってもう1度、スプーンを差し出してくる。

トキノリは諦めてマリーから食べさせてもらった。




「ふぅ。お腹いっぱい」

「そうですね。少し食べすぎました」

「食後に何か飲む?」

「では、お茶を貰えますか?」

トキノリはドリンクサーバーを操作して日本茶を淹れてマリーの前に置く。

「ありがとうございます」

トキノリは自分の分のコーヒーを淹れて向かいに腰を降ろす。

こうしたゆったりとした時間も良い物だ。

今度はマリーの為に何か買ってくるのも良いだろう。

クルーのメンバーも休日を満喫しているといいのだが・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る