第116話

「さて。どうしましょうかね?」

トキノリは男を取り押さえたままマリーと相談する。

「ええっと・・・。星系軍に通報します?」

「そうですね。って、その必要はなさそうですね」

トキノリは近づいてくる人達を見てそう言った。

統一された服装のこの人達はリーツ星系の星系軍だろう。

「騒ぎを起こしているのはお前達か?」

「襲われたので対応しただけです」

「細かい話は後だ。話は詰め所で聞かせてもらおうか」

どうやら襲ってきた男達共々、ついていくしかなさそうだ。

「連絡を入れたい場所があるんですけどいいですか?」

「はぁ・・・。まぁ、いいだろう。早くしろよ」

トキノリはサーシャに連絡を取る。

「サーシャさん。今大丈夫ですか?

「トキノリ様。何かありましたか?」

「ちょっとトラブルに会いまして・・・。星系軍にお世話になりそうです」

「そうですか・・・。大丈夫だと思いますが私も向かいますね」

「いえいえ。休暇中に呼び出すのは申し訳ないですよ」

「いえ。そういうわけには・・・。とにかく向かいますので」

「わかりました・・・」

サーシャには申し訳ないことをしてしまったなと思いつつ星系軍の指示に従って移動する。

施設に到着するとトキノリは個室に押し込まれた。

「さて。詳しい話を聞かせてもらおうか」

「連れがカジノで大勝ちしましてね・・・。それ目的で近づいてきたんですよ」

「なるほどな。まぁ、倒れてた奴らを見た段階で予想はしてたがな。だが、暴力を振るったのがまずかったな」

「正当防衛ですよ?」

「それでもだ。この星系だと罪に問われる」

星系ごとに法律が変わるのはよくあることだ。

皇帝が決める法を犯すことはできないが領主が設定できる法もあるのだ。

「お前が殴った奴の1人に領主様の一族が混ざってたんだ」

「なるほど・・・。一般市民が領主の一族に手をあげたというのが問題なんですね」

「そういうことだ。我々としても困っているがこればっかりはな・・・」

そう言って担当してくれた男は同情したような視線を向けてくる。

そこに慌てたように別の男が入ってくる。

「おい。釈放だ」

「どういうことだ?」

「この方は名誉男爵だ。爵位持ちなら話が変わってくる」

「なっ?それは本当か?」

「事実だ。これであの坊主も年貢の納め時だな」

トキノリは自分が名誉男爵であったことをすっかり忘れていた。

部屋から出ると心配そうな顔をしているマリーと呆れたような顔をしているサーシャが待っていた。

「トキノリ様。もう少し自分の身分を考えてください」

「いや。すっかり名誉爵位を貰ったのを忘れてましたよ・・・」

「細かい話は船に戻ってからにしましょう」

「はい・・・」

トキノリとマリーはサーシャに連れられて船に戻るのだった。

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