第117話
雪風に戻ってきたトキノリは食堂にてサーシャに怒られていた。
「トキノリ様。もう少し貴族としての自覚を持ってください・・・」
「あの・・・。すみませんでした。貴族になったことを忘れていました」
「いいですか?貴族にはいくつかルールがあるんです」
「ルールですか?」
「基本的に貴族を罰することができるのは任命した貴族だけです」
「そうなんですか?」
「トキノリ様を任命したのは皇帝陛下です」
「そうですね・・・」
「トキノリ様が問題を起こせば皇帝陛下の顔に泥を塗ることになります」
アルベルトなら笑って許してくれそうな気もするが忙しいアルベルトに迷惑をかけたくはなかった。
「気を付けます・・・」
「今回は正当防衛が認められるでしょう。ですが、そもそも巻き込まれないようにしてください」
「はい・・・」
「お説教はこれぐらいにしてお仕事の話をしましょう」
「わかりました」
「現在、請け負っている採掘の仕事が終わったら行きたい場所があるんです」
「行きたい場所ですか?」
「採掘された鉱石の行き先が気になりまして・・・」
「何か不審な点でもあるんですか?」
「もしかしたらフロント星系の一件とも関わりがあるかもしれません」
「なるほど・・・。そういうことでしたら調査してみましょう」
アナスタシアの助けとなるなら否はない。
「まずは目の前の仕事を片付けないといけませんね」
「そうですね。明日には採掘を再開できるように交渉しておきました」
「相変わらずの有能ぶりですね」
「褒めてもなにもでませんよ?」
「マリー。夕飯は雪風で食べていってください」
「はい」
「サーシャさんもたまには一緒にどうですか?」
「そうですね・・・。お言葉に甘えさせていただきます」
今回は自動調理器でそれぞれ好きな物を選んで夕食を済ませた。
「ふぅ。美味しかったです」
「それはよかったです」
「私はマリーゴールドに戻りますね」
「ゆっくり休んでくださいね」
「はい。それでは失礼します」
そう言ってマリーはマリーゴールドに戻っていった。
トキノリがそろそろ寝ようかと思っていた頃に来客があった。
「トキノリ様。すみません。この星系の領主様がきているのですが・・・」
「領主様がですか?」
「恐らく謝罪のためにきたのではないかと・・・」
「謝罪ですか?」
「一族の者が迷惑をかけたのですから当然の反応ではあります」
「そういうことですか・・・。では、僕の部屋に通してください」
「よろしいのですか?」
驚かれるのは無理もなかった。
船の中というのは機密の塊だ。
親しくない相手を招きいれることは普通はしなかった。
「仮にも領主様ですからね。船の外で対応するのも・・・」
「そうですね。わかりました。そのように手配します」
この星系の領主が常識的な人であることを願うトキノリだった。
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