第77話
予定外の珍客を乗せることになったが出航の準備を進める。
「トキノリ様。出航準備完了です」
「了解。管制と連絡を取り出航してください」
トキノリが指示を出すとオペレーターが管制とやりとりをする。
「管制から出航許可、出ました」
「了解。雪風、出航せよ」
雪風はドックを出て待機していたマルエ公爵の艦隊とアナスタシアを護衛してきたエニュー帝国の艦隊と合流する。
「エンジンの調子はどうですか?」
「出力安定しています。前のエンジンもよかったですが太陽石性のエンジンはけた違いに良いですね」
トキノリもデータで確認する。
出力は5パーセント程で安定しており、いかに太陽石性のエンジンが高性能かを示している。
そう言っている間も雪風は動いており艦隊の中心に陣取った。
「ふむ。話には聞いてましたがこの船は良い船ですね」
出航をブリッジで見守っていたアナスタシアがそう言う。
「やっぱり雪風は落ち着きますね」
そう追従するのはユーラシアだ。
「自慢の船を褒めていただけるのは嬉しいですがエニュー帝国には凄い船がいっぱいあるのでは?」
「残念ながらこの船ほど金のかかっている船はないのじゃ」
「そうなんですか?」
「船とは基本、消耗品じゃ。皇帝の乗る船でもそれは同じ。何かあった際には他の艦に乗ることになる。1隻に馬鹿高い金を支払うのは効率的ではないじゃろ?」
「言われてみれば確かにその通りですね」
トキノリはアナスタシアの意見を最もだと納得してしまった。
どれだけ雪風の存在がおかしいのかが露呈した形だ。
だが、雪風を買ったことを後悔はしていない。
「アナスタシア様。ユーラシア様。飲み物でもいかがですか?」
「せっかくだし頂こう」
「私も頂きます」
「では、紅茶をお出ししますね」
トキノリはドリンクサーバーを操作して紅茶を選ぶ。
名前だけではどれがどれだかわからなかったがとりあえず高そうな奴を選んでおく。
「どうぞ」
トキノリはそう言って2人に紅茶を渡す。
「ふむ。いい香りじゃな。ここまで上質の紅茶を移動中に飲めるとは思わなかったのじゃ」
どうやらトキノリの選択は間違っていなかったようだ。
トキノリも自分用にコーヒーを淹れる。
エニュー帝国の帝都まではワープを入れて1週間ほどかかる予定だ。
特にすることのないトキノリのメインの仕事はアナスタシアとユーラシアの相手をすることになるだろう。
真面目に働いているクルーには申し訳ないが接待も仕事のうちだ。
非礼がないように細心の注意を払わねばならない。
クルーもそれがわかっているのか少しぴりぴりしている。
元々、彼等は軍人であるしこれが本来の姿なのかもしれない。
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