第74話
ユーラシアとお茶を楽しんでいると1人の女性が近寄ってくる。
「あらあら。悲しんでいるかと思ったら殿方とデートなんて、ユーラシアもやりますわね」
「アナスタシア皇女殿下・・・?」
「久しぶりですわね。サルベン公爵家に貴方を訪ねたらいないんですもの」
「申し訳ありません」
「私は怒っているわけではないのよ?でもね、こうなる前に親友である私を頼ってほしかったわ」
「我が家の事情で皇族の方の手をわずらわせるわけには・・・」
「サルベン公爵も同じことを言っていたわね」
「トキノリ様。ご紹介いたします。こちらの方はエニュー帝国の皇女殿下のアナスタシア様です」
「ハラヤマトキノリです。今はユーラシア様の元で運送業をしております」
「私の親友であるユーラシアを助けてくれたそうね。お礼を言うわ」
「恐れ入ります」
「貴方に依頼をしたいのだけどいいかしら?」
「依頼ですか?」
「ユーラシアを帝都まで連れてきてくれないかしら?」
「ユーラシア様をですか?失礼ですがアナスタシア様が乗ってきた船があるのでは?」
「そうなのだけどね。礼儀のうるさいのもいるし伸び伸び過ごしてほしいのよ」
「ユーラシア様。どうしますか?」
「確認だけどこれは正式な招待なのよね?」
「そうね。私からの正式な招待よ。陛下も会いたがっているしね」
「なら、選択肢は他にないわね。トキノリ様。申し訳ないのだけど帝都までお願いできるかしら?」
「わかりました。でも、船員は休暇中ですからどうしましょう?」
「休暇を切り上げる必要はないわ。私も少しゆっくりしたいから」
「では1週間後の出発ということでいいですか?」
「それで構わないわ」
思わぬ飛び込みの仕事ではあるが同時に楽しみでもある。
サニュー帝国の帝都は防衛上の観点から許可された船しか近づくことが許されていない。
観光船もあるにはあるが倍率が高く選ばれたとしても少しでも怪しいところがあれば入都を許されないのである。
トキノリも興味はあったが行ったことがないので楽しみだ。
「2人の邪魔をしてもあれだから私はそろそろ行くわね」
そう言ってアナスタシアは行ってしまった。
「嵐のような方ですね」
「そうですね。自由奔放なところもありますが親しい者には優しい尊敬できる方ですよ」
「素敵な親友ですね」
「そうですね。遊びにと言ってましたが、本音は心配できてくれたのでしょうし」
皇族が動くというのは大事だ。
移動するだけでも大勢の人が関わることになる。
ユーラシアの為に動いたのだとしたら皇族としてはフットワークがかなり軽いのだろう。
男であるトキノリでは踏み込めない話もある。
アナスタシアが来てくれてほっとしたのも事実だった。
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