第32話
雪風はニコラス星系を離れ航路を外れた。
その理由は次の目的地であるリーズベルト星系が少し離れているためワープ航行する為だった。
「航路を外れてしまいましたがいいんですか?」
「はい。少し距離があるのでワープします」
「ワープですか?この船にはそんな装置もついているのですね」
ワープ装置のついていない輸送艦と言うのも多いのだ。
燃料や効率を考えれば全ての船に搭載すべきだと思うだろう。
だが、現実としてそれは実現していない。
その理由はワープ装置が高額だからだ。
その代金を支払うのは普通の人には難しいのだ。
それに現在、出ているワープ装置を既存の船に後付けするというのも現実的ではない。
載せること自体は可能でもどこかしら無理が出てしまう。
その無理を通せばワープ装置の精度と言う面で現れてしまう。
ワープ装置を搭載した船を手に入れようと思えばどうしても専用に設計された船を購入するしかないのだ。
ワープ装置と船の購入代金。
そのダブルパンチに耐えられるほど資金が豊かな者と言うのは必然的に限られてくる。
トキノリのような例外もいないわけではないが少数派だろう。
「さて。それでは飛びますよ」
「ワープの瞬間はいつもどきどきしますね」
「ワープします」
トキノリがそう言うと同時に雪風はワープを行った。
ワープ航行が終わるまで3時間ほど。
何もトラブルが起きなければ特にすることもない。
「お腹が空いたでしょう?今、ご飯を準備しますね」
「お手伝いします」
トキノリとユーラシアは仲良く食堂に向かう。
トキノリはユーラシアの為に自動調理機に材料を入れて稼働させる。
今回、選んだメニューは肉と野菜をたっぷりと使ったシチューだった。
それに保存缶に入ったパンを添えればご飯の出来上がりだ。
本来は保存缶に入ったパンは保存食だが貴族であるユーラシアのことを考えればこれぐらいの出費は痛くない。
しばらく待っているとシチューが出来上がある。
「今、お皿を用意しますね」
そう言ってユーラシアは棚から食器を持ってくる。
トキノリはそれを受け取ってシチューを盛り付ける。
「さて。準備もできましたし食べましょうか」
そう言ってユーラシアを促す。
トキノリ自身は今日も軍用のレーションがご飯だ。
「トキノリ様。気になっていたのですけど、それは美味しいのですか?」
「美味しくはないですね」
「では、何故それを・・・?」
「金銭的理由です。これが栄養も取れて一番安いんですよ」
「そうだったんですね・・・。では、次は私も同じものを食べます」
「そういうわけには・・・」
「ご厄介になっている身ですから負担にはなりたくないのです」
そう言ってユーラシアは引きそうもない。
まぁ、試しに1回ぐらい試してもらうのも悪くはないだろう。
これも経験という奴である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます