第4話
「よし!この船に決めました」
「お客様。本当によろしいのですか?」
そう言って造船会社の社員は聞いてくる。
「はい。何よりこのシルエットが気に入りましたから」
「そう言っていただけると設計した技師も喜ぶと思います」
「そうなんですか?」
「ここだけのお話ですが造ったはいいものの値段が高すぎて誰も買ってくれない不良在庫でしたから・・・」
値段を考えれば確かにこんな額を出してまで買う酔狂な人はいないだろう。
「ここって確か船の買取をしてましたよね?」
「はい。しております」
「では、前に乗っていた船の買取をお願いします」
「承りました。現物を確認したいのですが・・・」
「そうですね。では、案内します」
造船会社の社員を連れて借りているドックまで来た。
「中々、年季の入った船ですね」
「そうですね。親から譲り受けた大切な船です」
「色々見させていただきますね」
そう言って造船会社の社員は船の状況を確認する。
「丁寧に整備されてますが・・・。エンジンが死んでますね」
「そうなんですよ。私もこれには困ってしまって・・・」
「う~ん・・・。エンジンが生きていれば500万クレジットぐらい出せたんですが・・・。どう頑張っても100万クレジットが限界です」
「そうですか・・・。でも、それだけの価値をつけてくださってありがとうございます」
「いえいえ。こちらも商売ですから。こちらにサインをお願いします」
トキノリは渡された紙にサインをする。
「これで買い取りの手続きは終了です」
「はい」
「それでは続いて買っていただいた船の手続きもしてしまいましょうか」
「そうですね」
そう言って別の紙を造船会社の社員が出してくる。
それにもトキノリはサインする。
「船名はどうしましょうか?」
「雪風って名前は使えますか?」
「雪風ですね。少々、お待ちください」
そう言って造船会社の社員は端末を操作する。
「確認が取れました。お客様は運がいいですね。1か月前に廃船処理をされて現在はフリーです」
「では雪風で登録をお願いします」
「はい。登録完了です」
「ドックの方も準備しておいた方がいいですよね」
「そうですね。この規模のドックでは入りませんから。船の引き渡しは1週間後になりますがよろしいですか?」
「それで大丈夫です」
トキノリは端末でドックの空き状況を確認する。
幸いなことに万能戦艦を泊められるドックが1か所だけ空いていた。
その場でトキノリはドックを確保する。
「ドックの方も確保したのでこちらにお願いします」
「はい。確認が取れました。1週間後、こちらに船をお届けします」
「今回はありがとうございました」
「いえ。こちらこそお取引いただきありがとうございました。何かありましたら気軽にご連絡ください」
「はい。その際はよろしくお願いします」
こうして、トキノリは無事に新しい船を手に入れた。
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