第2話
銀行に突撃したトキノリだったが用紙を見せると何故か豪華な部屋に通された。
「こちらでしばらくお待ちください」
そう言って銀行員は去って行く。
正直、場違い感が半端ない。
こんな部屋では落ち着くのは難しい。
気が付けば貧乏ゆすりをしていた。
「お客様。お待たせしました」
そう言って部屋に入ってきたのは初老の男性だった。
「私はこの銀行の支店長を務めておりますトーマスと申します」
「トキノリです」
「まずは高額当選おめでとうございます。現金でご用意しますか?それとも端末に登録いたしますか?」
現金で用意されても持ち運べないだろう。
「端末でお願いします」
「わかりました。では、端末をお預かりいたします」
「はい」
トキノリは腕時計型の端末を外しトーマスに渡す。
「確かにお預かりいたしました。少々時間がかかりますのでその間、歓待させていただきます」
トーマスがそう言うと女性の銀行員がワゴンを押して中に入ってくる。
ワゴンの上にはお菓子や飲み物が満載されていた。
「お客様。飲み物はどうしますか?」
「では、紅茶を」
「はい。今お淹れしますね」
そう言って女性の銀行員は手慣れた手つきで紅茶を淹れてくる。
紅茶の良い匂いが漂ってくる。
一口飲んでみればフルーティーな味がした全体に広がる。
「お味の方はいかがでしょうか?」
「とっても美味しいです」
絶対にこの紅茶は高い奴だ。
合成の紅茶も多く出回っているがこれは天然物なのかもしれない。
「お菓子の方はいかがしますか?」
「そうですね。では、クッキーを」
「はい」
ワゴンの中からクッキーを取り出すと目の前に出してくれる。
一口クッキーを食べれば甘味が広がる。
嫌な甘さではなくこれならいくらでも食べられそうだ。
ついつい手が伸びて出された分をあっという間に完食してしまった。
「お替わりもありますよ?それとも、別の物を試してみますか?」
「何かお勧めはありますか?」
「季節のフルーツを使ったケーキなどいかがでしょうか?」
「お願いします」
せっかく用意してくれたのだし食べないともったいないよなと自分を納得させてトキノリは思う存分に歓待を受けることにした。
散々食べ食いした頃にトーマスが戻ってきた。
「お待たせしました。100京の振り込みが完了いたしました」
そう言って端末を恭しく差し出してくる。
端末を起動させてみれば確かに100京が振り込まれていた。
「ありがとうございます」
「いえいえ。当銀行をご利用いただきありがとうございました。何かあった際は今後も当銀行をご利用いただけると幸いです」
「はい」
トキノリは満面の笑顔を浮かべるトーマスに見送られて銀行を出る。
「この金があれば新しい船を買えるな」
そう言ってトキノリはスキップしながら造船会社に向かった。
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