万能戦艦雪風
髙龍
第1話
「はぁ・・・。またトラブルか」
そう言って呟いたのはこの輸送艦の持ち主であるハラヤマトキノリである。
この輸送艦は両親が残してくれた財産であり仕事道具だが、それでもこれだけトラブルが多いと嫌になってくる。
「仕事を終えた後でまだよかったな」
もし、仕事中にトラブルが発生して荷物の到着が遅れれば違約金の支払いをしなければならないところだった。
「とにかく修理するしかないな」
そう言って工具を手に機関室に向かった。
「ふむふむ。熱暴走か・・・。なら、冷却材で冷やしてやればいいか」
そう言ってトキノリは何の躊躇もなく冷却材でエンジンを冷やす。
するとエンジンはなんとか通常運転に戻った。
「よしよし。いい子だ。母港まで頼むぞ」
そう言ってトキノリはブリッジに戻る。
「次のトラブルが起きる前に母港に戻らないとな」
そう言って進路を母港であるアンタレス星系の軌道ステーションに向けた。
年間で借り受けているドックに輸送艦を泊める。
「ふぅ。なんとかなったな」
そう言った次の瞬間だった。
エンジンがいきなり止まる。
トキノリは慌てて機関室に飛び込む。
エンジンは完全に焼き切れており手の施しようがなかった。
「マジか・・・。流石にエンジンを載せ替える金なんてないぞ」
しばらく色々試したが復旧は不可能だった。
「こりゃ、完全にダメだな・・・」
金は先程、完了した仕事の報酬が振り込まれているがそれでも1か月分ぐらいの生活費分しかない。
このままでは干上がるのも時間の問題だ。
「はぁ・・・。宝くじでもあたんねぇかな?」
そう言ったトキノリはゲン担ぎで買った宇宙くじをポケットから取り出す。
「うん・・・?なんか光ってね・・・?」
宇宙くじは当選すると発光する仕組みなのだ。
当選した額はわからないがいくらであろうと今の状態を考えればありがたい。
トキノリは換金すべく宝くじ売り場に突撃する。
「あの・・・。宇宙くじが当たったんですけど」
「ご利用ありがとうございます。お調べしますのでくじをお預かりします」
「お願いします」
宝くじ売り場のお姉さんが丁寧に宇宙くじの当選結果を調べてくれる。
お姉さんは驚いたような顔をしてちらりとこちらを見てくる。
「お客様。おめでとうございます。100京クレジットのご当選です」
「100京・・・?本当に・・・?」
「本当ですよ。こちらでは換金できませんのでこちらの用紙を持って銀行に行ってください」
そう言ってお姉さんは紙を渡してくれる。
そこには高額当選通知書と書かれていた。
顔をつねってみる。
痛い。
と言うことは夢ではない?
まだ、半信半疑だがとにかく銀行に向かうしかないようだ。
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