第5話

アメリカの短大に通った。


私の夢は英語が話せるようになること。

それも、日本で英会話で学べるようなレベルではなく、生活の全てが英語で分かるようになること。

必然的にアメリカでの生活になってしまった。


訳すのではなくそのまま英語。


ある日ビジネスコミュニケーションというクラスの中で、他の星に生物がいたとして想像してどのような見た目か描きなさい、というクイズがあった。

私は他の星なんだから人間と同じような見た目なわけがないと思い、想像から絵を描いたのだが(生命の核の様なものが中心にあるが周りは形の無いオーラのような太陽のような光の形をした物体)

周りにチラリと目をやると、ほぼ皆4本足の動物のような物を描いている。


マズい。また周りと違うものを想像してしまった。


と、書き直した。


暫くして先生からの回答。


今の問題はスタンフォード(ハーバードだったかも)の大学院に入る時の入試問題です。

地球外のものなんだから同じであるわけがないので、全く違うものを描いた人が選ばれる、

と。


え。


いいんじゃん。


周りと違っていいんじゃん。


…これがですね、日本の教育の悪いところで

私の何十年もかけて培った、周りに合わせる、という努力の賜物なのですよ。

自分の能力を出す、ありのままの自分でいる、というよりも、

周りに合わせる。

このスキルが日本では大変重要とされていて、学校も、形に入れないとイジメられる、先生からも注意される、

目立ってはダメ。

人と違うことをしてはダメ。


このクラスで、自分はスタンフォードにも行ってなくてただのそこら辺のローカルの短大だけど

周りと同じにしないでいいんじゃん、

それが評価される国なんじゃん?と気付き始めた出来事。


数学のクラスもとった。

初歩的なクラスからとった。

理由は全てが英語になるから。「整数」「方程式」「因数分解」など、全て英語。それから覚えるので数式などが難しいと分からないだろうと思って文系の子が取れる一番最初のクラスからとった。


満点取れました。


素直にやれば出来るのが学校。


だけれど、人と同じでないといけない、と日本の教育で小さい頃から刷り込まれていた私。


やばい、満点とって目立ってしまった。

次からは紛れ込めるように手を抜かなくてはいけない。

と、即座に思った。

凄いじゃない!100点!やるー!と

クラスメートに言われても、

え、とんでもない… と小さくなってたら、

やめなさいよ、堂々と威張りなさいよ、

と、言われました。

100点満点とってるんだから、と。


ここから自分との闘いは始まり、続きます。


自分はダメでなければいけない、

人より下でなければいけない、

と、人より出来るわけがない、という

自分を蔑む卑下するイヤな余計なもの。

人の方が上、私は下、という

余計な目に見えない言葉に表せない信じられないほどの周りからなのか個の中からのものなのか。

どれだけ出来てもクラスで一番を取っていても出来ない、と思わされる。


私はアメリカの短大の数学のクラスで100点とったが、

会計学のクラスでも何回か満点以上をとったのだが、

一位のスコアを見た瞬間、あり得ない!

と自己否定。

そしてわざと落としていくんだ。

目立たない為に。


これではいけない。


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