【短編小説】家族や友達との活動
遠藤良二
【短編小説】家族や友達との活動
「お前! 俺らがどれだけ苦労して育てたかわかっているのか!」
「僕は育ててくれって頼んでないよ」
「お前ってやつは! 何てこと言うんだ!」 僕は馬鹿馬鹿しくなったので家から出た。すると母が後から追ってきた。
「義男! お義父さんに謝りなさい!」
(何で血の繋がらない義理の父に謝らなくちゃいけないんだ! 知るか!)
そう思ったがそれは言わなかった。義理の父親が怒った原因は「僕が家を出る」と言ったから。この人は僕が家にいて欲しいのだろうか。実の母が再婚したのは僕が十一歳の頃。僕は母が再婚するのは嫌だった。そんな知らないおじさんは嫌だから。 僕は一番上で長男。
母が父と別れた理由は父が浮気をしたから。最低な父だったが、僕達兄妹には優しかった。それは僕が小学校五年の頃の出来事だが。あれから二十年くらい経過し、母は五十五歳になった。義理の父は六十歳で居酒屋で知り合ったと実の母は言っていた。義理の父は金は持っている。でも、その金は母には渡していないらしい。金の管理は義理の父がしているようだ。パソコンのExcelで計算しているのを何度か見たことがある。きっと家計簿をつけているのだろう。
二番目は
三番目は
四番目は
結果的に、義理の父は兄妹みんながあまりよく思っていないようだ。祝福されない結婚とも言える。(ざまあみろ)。母も義理の父も大した人間ではない。因みに義理の父の職業は土木作業員をしている。だから、尚更気性が荒い。義父さんは昔の人だから、自分の言うことをきかないと怒る。そんな人間、この時代に通用しない。必要とされていない人材だ。だから、今の仕事もよくクビにならずに働いていると思う。もしかしたら、職場での態度は違うのかもしれない。うまいことやっているな。さすが長年生きてきた人だ。そこは認める。
義理の父は僕にある提案をしてきた。それは、家族で都合がつくやつだけでいいから、旅行にいかないかと。それをみんなに訊いてくれと言った。(自分で提案したんだから、自分で訊けばいいのに)と思ったがそれは言っていない。「僕はお金ないから行けないよ」と断った。義理の父は、「何だ、同居している人間が行けないのは困るな。仕方ない、義男の分は出してやるよ」 そういう問題じゃないんだよな。この人と行動を共にしたくないだけなのだ。でも、そう言うと母は「お義父さんがせっかく言ってくれてるんだから行ってやりなさい」と言った。
仕方なく夜に一人ずつ電話をして訊いてみた。美紅は「行く! でも娘も一緒でいいのかな」それを義理の父親に訊いてみたところ「もちろんだ!」と言っていた。美紅に伝えると喜んでいた。それから、幸太郎も行くと言っていた。
残りの海川美紀は、母が再婚しようとしている時、子どもの気持ちよりも、自分の幸せを優先している母が嫌いという理由で行かないと言っていた。彼女は実家にも寄り付かないので仕方ないだろう。
因みにどこに行くのだろう。僕らは北海道に住んでいる。義理の父は、「奈良の大仏を見に行く」と言っている。僕はあまり大仏には興味がないがまあ、仕方ないだろう。この際だから付き合ってやるさ。それに、美紀は結婚して忙しいのもあるし、母のことを嫌っているから本当は兄弟姉妹の仲を安定させるために参加して欲しいが強制はできない。だから今回参加するメンバーは、母・美紅・美紅の娘の妙美・幸太郎・僕・義理の父の合計六名。 新千歳空港から二泊三日で行く予定。それがいつかはまだ決まっていない。シフトがある職場に勤めている家族もいるから、前もって上司に報告しなければならない。シフトで仕事をしているのは、僕だけだ。美紅は妙美の面倒をみるために生活保護をもらっているので無職だし、幸太郎は保育所の先生をしているので、土曜日・日曜日は休み。月曜日を休みにしないといけない。僕は土曜日・日曜日・月曜日に休みをとらないといけない。因みに、義理の父親の休みは土曜日・日曜日・月曜日にとれるのだろうか。まだ、どんな仕事をしているか詳しく訊いていない。まあ、何でもいいが。興味ないし。ただ、今回の旅行は土曜日・日曜日・月曜日に休みを取らないと行けない。あと、飛行機の予約とホテルの予約もしないといけない。これらの手続きは僕がしなければいけないのか? 言い出しっぺの義理の父は何もしていない。全て僕に任せている。仕方ない、面倒だけどやるか。ネットで予約しよう。そのためには、僕の休みをどの週の土曜日・日曜日月曜日を休みにするかを上司と一緒に考えなければならない。明日、出勤したら話してみよう。
翌日になり七時にアラームをかけ、その時刻にけたたましい音で目覚めた。ガバッと飛び起き引き出しから下着と黄色いTシャツを手に取りシャワーを浴びに浴室に向かった。ボイラーの温度を四十二度にしてパジャマと下着を脱ぎ、全裸になった。浴室に入り、シャワーのお湯を出した。出したばかりで、まだ水の状態。少ししてお湯になり、ちょうどいい水温なので頭からシャワーを浴びると一気に目が覚めた。居間のカーテンはまだ閉まったままなので、開ける前に物干し竿に乾かしてあるバスタオルを取りに行った。バスタオルを用意するのを忘れていた。全身ビショビショで居間に行ったので居間の絨毯も濡れてしまった。仕方ない、自然乾燥にしよう。同じ物干し竿にかかっている上下の紺色のジャージを取ってから再び脱衣所に行ってバスタオルで体を拭いた。それから下着とTシャツとジャージを身に着け、昨日の夕方買っておいた六個入りのバターロールと、冷蔵庫に入れてあった缶コーヒーを一本取り、居間のテーブルに置き、食べ始めた。(明日はチョコレートが入ったパンとあんぱんと缶に入ったココアにしようかな)と思った。それから歯を磨き、髪をドライヤーで乾かし、ワックスでセットした。 時刻は八時二十分なのでそろそろ出勤する時間。八時三十分には部屋を出よう。
上司というのは女性で主任。白髪頭で背はスラっと痩せている。(主任はこの仕事をどれくらい続けているのだろう)。僕は二十八歳の時転職して今、二年目。今までで一番長く働いている。どうも仕事が長続きしない。思い当たる原因は、人間関係が上手くいかないのと、仕事を覚えきる前に嫌になってしまう。でも、今の職場は人間関係も悪くないし、仕事も自宅でやっているような炊事、洗濯などだから出来ている。僕は帰り際主任に話しかけた。「主任、来月のシフトにことでお話ししたいんですが時間はありますか?」 主任は女性にしては低音の声。「うん。いいよ、どんな話し?」 僕は、家族で旅行に行くのでどこかの週で土曜日と日曜日を休みにできないですか? かという話しをした。すると主任は「それは、来月の休みに組み込んでおくね。今月というなら無理だったけど。事前に言ってくれたから大丈夫よ」「わかりました。ありがとうございます!」 僕は(OKをもらえた。よかった)と思った。
話している間に先輩達が(お疲れ様でーす)と主任に言いながら退勤していった。僕は「お時間取らせてしまってすみません」そう伝えた。主任は、「いやいや、気にしないで。これも仕事の内だから」
「ありがとうございます」 とお礼を言い、(何て良い上司なんだ)とつくづく思った。
主任は話を続けた。「家族旅行は一泊二日なんだね」
「いえ、二泊三日ですよ」 主任は不思議そうな顔をして、「あれ、さっき土曜・日曜って言ってたよね?」「すいません、月曜日も追加でお願いします。第一土曜日からでお願いします」「わかったわよ」
月曜日も休みにすることを家族にも言わないと。 義理の父・幸太郎にそれぞれ電話で伝えた。すると、二人とも「わかってるよ、もちろん月曜日は有休とってる」(そうだったんだ、僕だけか、休みとってなかったの) そう思うと恥ずかしい気分になった。
仕事を終え、空港にまず予約を入れ、旅館はネットで調べて奈良の大仏に近いところに予約した。
来月の第一土曜日、日曜日、月曜日まではまだ余裕がある。僕が思っているのは、職場の人たちにお土産を買って帰ること。あと、親友二人にも買おう。気の合うやつらだから。友達の氏名は、
もう一人の親友の氏名は
木野崎と南川と僕はグループLINEで繋がっている。たまに三人で話したいのでLINEを送った。<久しぶり! たまに三人で話さないか?> グループLINEの名前は、「仲良し三人組」 ありふれていて、少し子どもっぽい気はするが、まあいいだろう。 最初に南川が十五分後くらいにLINEを送ってきた。<おう、久しぶり! おれはいいぞ!> さらに三十分後、木野崎からLINEがきた。<悪い! 今、彼女と会っていてLINEできない>(木野崎、彼女できたんだ。知らなかった。教えてくれてもいいのに。水臭いなぁ)。 そう思ったのでLINEで送ると暫くして木野崎からLINEがきた。<グループLINEで話そうかと思ったけど、自慢にしかならないと思っていわなかったのさ> 南川は、<そんなこと思わねーよ! なあ、吉田?> と言うので僕は、<ああ、もちろんだ。この三人は何でも打ち明けようって言ってたじゃないか><そうだったな、悪ぃ> 南川は、<まあ、俺らも子供じゃないから言えないこともあるかもしれないけどな> 僕は、<ん……。まあ、確かに大人になればそれぞれ事情があって言えないこともあるよな> 僕は残念な気分になった。昔のように何でも話せる仲ではないんだな。大人になると。<南川には文字で送っておくから見てくれ> と言った。<明日、三人でラーメン食べに行かないか?> という内容のもの。南川からはすぐにLINEがきた。<おれは行けるぞ> 木野崎からはまだこない。まあ、彼女といたらゆっくりLINEもできないかもな。でも、自由にならないのは考えものだ。まあ、僕の彼女じゃないから余計なことは言わないでおこう。 僕は南川に直接LINEを送った。<木野崎が来れなくても行くか?> LINEはすぐにきた。<ああ。行こうぜ。木野崎に合わせていたら行きたいところにも行けない><まあ、そうだな。僕が南川を迎えに行くよ><サンキュ! きっと木野崎は来れないだろ><多分な> そこで仲良し三人組のグループLINEに通知がきた。木野崎からだ。どうしたんだろうと思い開いた。<遅くなって悪い。彼女も一緒でいいなら、ラーメン、俺らも食いに行きたいな> 僕は少し考えた。(木野崎の彼女か、会ったことないな。どうしよう)。そこで南川のLINEがきた。<おれは大丈夫だ!> 僕は思ったことを正直に言った。<彼女と会ったことないし緊張するな> LINEはすぐにきた。<じゃあ、吉田は反対ってことか?>
<まあ……そうだな。悪いけど> 木野崎はこう言った。<わかった、彼女にそう伝えておくわ。三人で行ける時にいくか> 僕はというと、<できればそうしてもらえるとありがたい。僕、人見知りだからさ。わるいね><少しの間、LINEのやり取りは止まった> 木野崎は彼女に伝えているのだろうか。憤慨しなければいいが。
それから一週間が経ち、僕ら家族は奈良県に向かって月曜日に帰ってきた。お客様の家に行って作業するヘルパーと事務員に三箱と、木野崎と南川にお土産を買ってきた。カステラだろうか? よく見ていないからわからない。予想していたよりも楽しかった。鹿せんべいを食べさせてきたし。鹿は臭かったけど。でも、可愛かった。友達二人とも近い内ラーメンを食べに行くし。楽しみだ!
了
【短編小説】家族や友達との活動 遠藤良二 @endoryoji
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